カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
昨日に引続き、10月22日に行なわれた佐渡裕指揮ベルリン・ドイツ交響楽団松本公演鑑賞記、後半の部です(写真は、休憩中のホールの様子)。
この後半からコンマスが入れ替わり、どうやら日本人の方のようです。
今や世界のオケの弦楽パートには必ずと言って良いほど日本人奏者がおられますが、DSOには管楽器(フルート準主席)にも日本人奏者(しかもうら若き女性)が活躍されているのには少々驚きました(パンフを買おうとしたら、家内がイラナイというので、アジア系であることは間違いありませんが、実際に日本人の方々かは未確認です)。
嘗てドイツのオケ(フランクフルト?)でオーボエ主席を務めた宮本文昭さん(現在は指揮活動に専念)くらいしか知りませんでした。
日本のオケの管楽器(ホルンやファゴットにも)も、今では女性奏者が珍しくありません。昔は弦楽器でさえ女性奏者が多いとパワーが落ちると言われたものですが、時代ですかね。今やVPOにも・・・。
さて、第1楽章冒頭のクラリネットから、耳に慣れ親しんだメロディーが流れていきます。
多分にベートーベンの5番を意識したであろうと云われる「運命の動機」。
佐渡さんの指揮は、これまで聴き親しんだ演奏と比べると、どの楽章もややゆったりしたテンポで入って、次第にアッチェレランドしていきます。
飛び跳ねたり、腕をぐるぐる回したりというエネルギッシュな指揮は相変わらず。指揮者も時に腱鞘炎になると言いますので後年体を壊さないか心配ですが、でもこれが佐渡さんらしくて、まぁイイか(ただ、好き嫌いは分かれるでしょうが)。
コントラバスの低音の風圧、弦の擦れる音。指揮者のアインザッツを示すブレスの音。そして会場の雰囲気。どんなに良いオーディオや名演奏の録音よりも、やっぱり生はイイなぁ!
特にこの日は、DSO2011日本公演の初日とあって、ホール中央にはオーケストラか或いは大使館の関係者だと思われるドイツの人たちも10人ほど来られていて、独特の華やかさと期待感に会場は溢れていました。
休憩中のロビーのパネル紹介によれば、DSOは旧名ベルリン放送交響楽団。東西ドイツ分裂後、東ベルリンから逃れてきた旧ベルリン国立歌劇場の楽団員を中心に組織化されたという、設立時からの謂わばヴィルトゥオーゾ・オーケストラ。近年では、佐渡さんも毎年のように定期に招かれて、現地で好評を博している由(コンクール前の辻井さんデビューCDもこのコンビでのラフマニノフだった筈)。
若き日のロリン・マゼールも指揮をしていたとのことですので、彼らの演奏でリヒャルト・シュトラウスの交響詩のLPがあったような。
ワルツの第3楽章から、金管華やかな第4楽章へ。
ホルンの響きがやや硬く感じられたフレーズもありましたが、高らかなファンファーレから、ドイツのオケらしい重厚な弦の厚みと金管のパワフルなサウンドを以って、圧倒的な迫力で豪快にコーダを奏でながら華麗にフィナーレへ突き進みます。
アチコチからブラボーの声がかかり、立ち上がって拍手する聴衆もあちこちに。会場を包む嵐のような拍手に、何度かのカーテンコールに応えた後のアンコールは、同じチャイコフスキーの弦楽セレナードから第3楽章「エレジー(哀歌)」。普通なら “花のワルツ”辺りのような気もしますが、オケ側か或いは指揮者の意向か、大震災への哀悼の表れだったのでしょうか。
客席の5番での興奮も、エレジーで落ち着いてしまったのが個人的にはちょっぴり残念。最後のカーテンコールに応えた後、まだ拍手鳴り止まぬ中、佐渡さんが促して楽団員の皆さんもお互いの健闘を称えながら、舞台袖に下がっていきました。
「カーテンコールだけでも良かったのにな・・・。」
いやぁ、良かった!初めて生で聴いた5番、堪能しました。3月のBBCフィルよりもはるかに良かった。元気とパワーをもらったような気がします。
因みにこの5番は、サンクトペテルブルク・フィルが横浜公演で演奏するようです。5番と言えば、旧レニングラード・フィル時代のムラヴィンスキーの十八番(おはこ)。確かLPもあった筈。きっとそれを髣髴させるようなロシアの響きが会場に溢れることでしょう。都会はイイなぁ。
夕方5時半。秋の日のつるべ落としの如く、会場を出てすっかり暗くなった中を歩きつつ、頭の中を“運命の動機”がぐるぐると駆け巡っていました。中には奈良ナンバーの車で来られた方もおられましたが、遠路はるばる気をつけてお帰りください。DSOの皆さんも、ツァーの成功をお祈りしています。
その後、娘のところに上京する家内を駅に急いで送ってから戻ります。家内からメールが届き、
「素敵なコンサートでした。では、これから余韻に浸りながらあずさで寝ていきます。」
こらぁ、寝るなー!寝たらせっかくの余韻が冷めちゃうってば!