カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 6月末に松本を襲った直下型地震の影響で、ハーモニーホール(略称音文)が改修のために2013年3月一杯まで閉鎖となったことから、ハーモニーメイト主催のコンサートが幾つか中止を余儀なくされましたので、個人的には、ちょっぴり寂しい今年の“芸術の秋”。
そのため、シーズン劈頭にして、いきなり棹尾を飾るコンサートとなってしまった、ベルリン・ドイツ交響楽団(DSO)の2011ジャパンツァー初日公演が、ここ松本で開催されました。

 来日公演が松本からスタートするというのは、恐らく大変珍しいことです。ツァー“初っ端”の緊張感と気迫に満ちた演奏を地元で聴けるという幸運。
指揮は、その気迫に相応しく、今年BPO定期デビューで話題となった佐渡裕。3月のBBCフィルに続いての松本への登場です。しかも今回のプログラム(Bプロ)のメインは、是非一度は生で聴きたかったチャイコフスキーの交響曲第5番。チケット購入も、実は佐渡さん目当てではなく5番が目的です。

 10月22日土曜日の午後3時開演。
周囲の木々も色付きを増した松本県民文化会館(略称県文)へ、期待に胸を膨らませて向かいました。
今年は、結局中止となったOEKや他のオーケストラコンサートを音文で聴くために、このコンサートはS席ではなくA席にしたのですが、でも大ホールの1階後部の真ん中で、かなり良い席です。

 ちょうどこの日は、近くの野球場で秋の北信越高校野球の準決勝があって、春の選抜の切符を賭けて県勢同士がぶつかり、しかも地元松商の登場。そこに満席の佐渡さんのマチネ・コンサートも加わり(尚且つ県文の中ホールでは或る学会の全国大会とか)、周辺は大渋滞(SKFのオザワさんの代振りも、桐朋出身ではありませんが、ブザンソン繋がりで佐渡さんにすれば満席になったかもしれませんね)。
しかし、主催者側は予想できなかったのでしょうか?こちらは地元なので、迂回して裏道の農道を走って漸くギリギリ開演5分前に入場できました。チケットは完売とのことですが、予定より遅らせた開演にもかかわらず、間に合わなかったお客さんの空席がまだあちこちに。

 先ずは、ベートーベンの序曲レオノーレ第3番。
出だしから、弦の厚みに「あぁ、ドイツのオケだなぁ・・・」。舞台裏からのお馴染みのトランペットのファンファーレ。佐渡さんも指揮台で飛び跳ねるなど、スタートからアイドリングどころかエンジン全開です。
序曲が終わって、渋滞で間に合わなかったお客さんがどっと入ってきて満席になりました。

 休憩前のモーツァルトのピアノ協奏曲第23番。今回のツァー帯同のソリストは、ブルガリアの若手(と言っても27歳)、エフゲニ・ボジャノフ。
彼は、エリザベト王妃国際コンクール(2位)やショパンコンクール(4位)などの受賞暦だけではなく、辻井伸行が優勝したクライバーンコンクールでも決勝進出者(入賞せず)だったそうですが、個人的には今の時点ならむしろボジャノフの方が好みです(曲目は違いますが、チャイコのピアコンでは辻井さんはオケにまだ負けていましたから)。
第1楽章が始まっても、冒頭でカデンツァの運指の練習をしていた?(ように見えましたが・・・?)のは、ご愛嬌と言うかユニーク。
ボジャノフは響きが若くて明るいので、現時点では短調よりも長調の楽章の方が合っているように感じました。音の粒立ちは辻井さんですが、彼の技巧は確かです。特にアンコールで弾いてくれた、ナイーブでガラス細工のようなショパンのワルツ(変イ長調とのことでしたが何番?)はとても良かった。
(些か長くなりましたので、二つに分けて続きは明日へ回します)