カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 4月11日の日経文化面に小さく掲載された報道(朝日には無かったと思います)。
前日(10日)、世界の巨匠ズービン・メータ氏の呼び掛けに応え、N響と東京オペラシンガーズの“第九”のチャリティーコンサートが上野の東京文化会館で開かれ、演奏終了後聴衆全員のスタンディング・オベーションと共に、当日2200万円を超える義援金が集まったという紹介記事でした。

 確か、マエストロは3月11日前からフィレンツェ歌劇場の公演で来日されていて、震災の影響でフィレンツェ市長からの帰国命令を受け、震災後の公演が中止となった際に、マエストロはN響などに追悼コンサートを投げかけたものの、結局スケジュールの調整が出来なかったという別の報道がありました。
その後も氏は投げかけを続け、当初のオペラ公演が中止となってスケジュールが空いたN響や東京オペラシンガーズがマエストロの意志に応えてこのコンサートが実現し、海外からの演奏家が震災と原発事故により日本への来日を次々とキャンセルする中で、氏はこの演奏会のためだけに急遽再来日したとのこと。

 気にしていたところ、日を空けずに17日の「N響アワー」でその模様を放送してくれました。また24日早朝にはBSで全曲放送もされました。

 冒頭、マエストロからの追悼メッセージがあり、氏が促して会場全員での黙祷の後、犠牲となられた方々へバッハの管弦楽組曲第3番から第2曲アリア(G線上のアリア)が捧げられ、会場は拍手も無く深い祈りに包まれました。
メッセージの中で、ちょうど満開を迎えた上野の桜に被災された方々への思いを馳せ、犠牲になられた方々だけではなく、被災地で同様に犠牲になったであろうペットたちにもマエストロが触れられていたのが、大変印象に残りました。

 第九では、第一楽章冒頭の聴き馴染んだ弦のアインザッツから、マエストロの深い祈りと想いが音となり、オケも独唱者も、そして合唱団が氏のタクトに応えるように、祈りと共に、形容詞としては相応しくないかもしれませんが、特に第4楽章では東北まで“希望”よ届けと言わんばかりの気迫に満ちた、まさに渾身の第九、名演でした。演奏者だけではなく、会場の思い(祈り)が一体となったからこそ、だと思います。
年末恒例の“歓喜”とは全く違った“祈り”がそこにありました。
      
 終了後の聴衆全員のスタンディング・オベーションは、演奏に対する称賛は勿論ですが、何よりもこのためだけに駆けつけてくれたマエストロへの、そこに集まった聴衆からの、日本人としての感謝のようにも感じられました。

 番組の最後には、演奏終了後のロビーで来場者に義捐金を呼び掛ける、オーボエ主席の茂木大輔さん等のN響団員と当日のソリストの方々が映っておられました。

 クラシック音楽界においても、日本国内だけではなく、世界各地でこうした支援コンサートが開催されているようです。
こうした報道に接する度に、日本人として、感謝は勿論ですが、一体どう応えたらいいのだろうと考えさせられる今日この頃です。
もし、来日公演があれば、感謝を込めて先ずは足を運ぶ・・・ということでしょうか?

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