カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 松本も11日に松本城の桜の開花宣言が出されて、いよいよ春本番。
お城の公園には320本の桜があり、やはり賛否両論があったようですが、今年も「国宝松本城夜桜会」として14日から21日までライトアップされ、本丸庭園が夜間無料開放されています(本丸庭園内の売店の売上げの一部を義捐金とするそうです。写真は14日夜の我家のヒガンザクラ)。

 さて、「梅は咲いたか・・・」という小唄を持ち出すまでも無く、梅や桜などのように誰一人その花を待っている訳ではありませんし、咲いてもあまり注目もしてもらえませんが、リンゴ園や畦道の雑草たちも春本番を迎えています。
 早春の3月から、リンゴ園の日当たりの良い場所では、タンポポやオオイヌノフグリが可愛らしい花を付けています。
特にオオイヌノフグリは、一つ一つは小さな花ですが、このところの暖かさで一斉に咲き揃い、群生すると遠目からはまるで青い絨毯のように見えて、それは見事です。
誰にも見てもらえないのが可哀想にさえ感じるほど、けな気に一生懸命(と見る人間が勝手に感じるほどに)咲いています。
(写真は4月10日に撮影した、リンゴ園のタンポポと、ブドウ園のオオイヌノフグリです)
 片や、同じ早春でも福寿草などと命名されたお目出度い花や、またリンゴ園で良く見かける雑草にもヒメオドリコソウ(姫踊子草)という愛らしい名をもらった花もある中で、名前が「如何にも」ですので可哀想にさえ感じてしまいますが、同様に感じる人が他にもいらっしゃるようで、朝日新聞4月10日付「天声人語」でもオオイヌノフグリを紹介する中で、
『(略)まだ風の冷たい早春から、小さく愛らしく咲く。春の空を映したような四弁の花は、花の中心が白くなっている。ぱちりと瞳を開いたおさな子の利発さを、見る者に想像させる。
かつて、その名を不憫(ふびん)に思う人たちが「ほしのひとみ」という別名を提案したと、植物学者の長田武正さんが随筆に書いていた。長田さんは「こうなると今度はきれいごとすぎて、土の香りが欠けてしまう」。名前ひとつもなかなか難しい。(略)』
そして、文中で木下利玄という大正時代に活躍した歌人の短歌が紹介されていました。
 『根ざす地の 温(ぬく)みを感じ いちはやく 空いろ花咲けり 
  みちばた日なたに』

 道端に咲く小花に、優しい目を向けた歌です。
このオオイヌノフグリには、他にも「瑠璃唐草」という風流な別名もあるようですが、“ほしのひとみ”・・・確かに綺麗過ぎて“土の香り”は感じられなくても、そう呼んで、気付かずに通り過ぎてしまう人を振り向かせてあげたいような、そんな「けな気さ」をこの花は持っている-そんな想いを見る者に抱かせるような気がします。