カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 先日、第373話でご紹介した乗鞍の「中之屋」に行った際の道すがら、
「稲刻ダムの近くにも、観光客向けじゃないけど、地元の人が通う美味しいお蕎麦屋さんがあるんだって!」
と言う家内の一言。
これは聞き捨てならじ、と車を走らせながらダム周辺を探してみました。
紹介していただいた方は奈川出身で、実家に帰られる際に良く立ち寄られるのだとか。でも店の名前は覚えておられないそうです。

 その後、ネットで検索してみると、その時に当りを付けた店ではなく、どうやらここではないかなぁ?という全く別の一軒のお蕎麦屋さんが見つかりました。普通の民家風で、これでは車で走っていたら見落として、絶対に気が付きそうにはありません。

 そこで、社会人3年目で初めて休めた長女と家内が母娘二人水入らずで旅行に出かけた間に、私メを気遣って?(それとも置いてけぼり同士の連帯感で?)先週末にまた戻ってきてくれた次女と、評判のお蕎麦を求めて再度島々谷を目指すことにしました。

 気を付けながら車を走らせ、ダム湖を過ぎ稲刻の集落の中に、漸く見つけたその店『わたなべ』がありました。駐車場は3台分。幸い一台の空きスペースがあり、停めて店内へ。テーブルが3卓、12席という如何にも昔の食堂然とした小さなお店です。
お婆ちゃんが蕎麦を打ち、娘さんと二人で店を切り盛りされています。昔ながらの、蕎麦の味同様に、お二人の人柄そのもののような素朴なお蕎麦屋さんです。(壁に掛かった蕎麦も蕎麦のメニューに混じって、ラーメンとあるのが気になります)。
何となく、父が好きで何度か連れて行ってくれた、開智小の前にあった田舎蕎麦の「奈川」を思い出しました。そう言えば、あそこはオヤジさんと娘さんだったなぁ・・・(残念ながら、オヤジさんが病に倒れ閉店し、その後父は似た蕎麦を求めて浅間温泉は「かどや」に変更)。

 早速(温蕎麦もあります)、盛りの大(550円)を二つと、そばがき(500円)を注文。

 最初に、お皿に一杯の自家製の漬物(+唐辛子の漬けたのも)をサービスで持って来てくれました。うーん、ビールに合いそうです(ビール抜きで、漬物をつまみつつ待つこと暫し)。
チョッピリ不揃いな昔ながらの二八の蕎麦は、しゃきっと締まっています。そして、てらいも無く片手鍋のまま出されたそばがきは、蕎麦粉の味が口の中に広がります。娘は苦手と言うので一人でいただきました。つゆではなく少し濃い目のタレに付けていただきます。
娘が何となく物足りなさそうだったので、並盛り(450円)を追加。最後に、どろどろの蕎麦湯もいただいて、二人とも満腹です。並盛り2枚が適量でしょうか。それでも900円です。今回は二人で、〆て2050円です。安いなぁ!
 昔、お婆ちゃんがやっていた頃の「野麦」もそうだったように、きっと、世間での評判や、講釈や、格式や、そんなことには無頓着に、自分の打つ蕎麦をただ喜んで食べてもらいたいだけ。そんな「渡辺」のお婆ちゃんの声が聞こえてきそうな蕎麦でした。
観光客の皆さんも評判を聞きつけてか、次々と来られて外で待っておられますので、地元客は早々に店を出ることにしました。
「お待たせしました」、「あっ、どうもスイマセン」
 帰路、島々谷の紅葉が見事でしたので、島々宿の道路脇の空き地に車を停め、写真を撮りました。
この谷を遡ってウェストン郷も上條嘉門次の案内で歩いて行ったであろうこの道は、上高地へ至る徳本峠に続いています。

 間もなく、上高地は雪に閉ざされた静寂な時を迎えることでしょう。