カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 リンゴが結ぶ縁か、ブログ効果か、この時期色んな人がリンゴ園を訪れて来てくれます。本当にありがたいことです。

 今年は、319話でご紹介した、7月にリタイアされた会社の大先輩が奥様とご一緒に茅野から23日に来てくださいました。
とりあえずは、昔からの趣味の音楽と奥様ご一緒での野菜作り(これが家庭菜園以上の本格派)、そして最近始められたと言う渓流釣りと、先ずは定年後の充電中と言ったご様子。
本当に微笑ましくなるほどの、イイご夫婦です。見習わねば・・・(と一時の反省のポーズ。チロルがあくびをしていました・・・)。

 また、27日には大学時代の合唱団の後輩が二人、わざわざ岐阜から来てくれました。二人とも大学卒業後、郷里の岐阜県で教師をしています(一人は既に引退し主婦業専念)。
私がOB会にも出ず疎遠(せいぜい賀状のやりとりくらい)になっていたのですが、彼女が最初にこのブログを“発見”し、メンバーに紹介してくれてからまた糸が繋がり(第190話参照)、同郷の彼が作る会報を私にも送ってきてくれます。そして、その繋がりで大阪に住む同期からは今年リンゴの注文がありました。
松本在住のOBにも声を掛け、夕刻到着した彼らと久し振りの再会後飲食店で歓談。30年という時空を超えて、皆心は京都での学生時代にワープしたひと時でした。
翌日、リンゴ園に来てくれて、運んできてくれた思い出のお返しに、当園のリンゴを積んで岐阜に戻って行きました。

 そしてもうひと方。この春、転勤で松本に来られ、このブログへのコメントをきっかけに、H/Pからリンゴの注文をいただいたのが縁で、その後の家内とのメールのやり取りの中で、当園のすぐ近くに住んでおられるのが分かり、だったらと、直接リンゴを買いに来てくださいました。

 リンゴのお陰で、懐かしい、また新しい縁が拡がっていきます。
皆さま、ありがとうございました。

 お借りした上岡敏之&ヴッパタール交響楽団のDVD(第342話参照)をハーモニーホールの事務所に返却に行ったついでに、実は昨晩、11月27日に行われるコンサートチケットを購入してありました。我が家にとっての2010年最後、締めの演奏会です。

 それは、1969年、当時弱冠18歳でロン=ティボー国際コンクールに優勝し、その後“ロシアの名花”と謳われるリューボフ・チモフェーエワの、今年の“ショパン年”に因んだ、幻想即興曲を始めとする10余曲のショパンを中心とした(他にプロコフィエフやラフマニノフなど)ピアノ・リサイタル。

 ハーモニーメイト主催とは言え、何とメイト価格1000円!(一般でも3000円です)。
ハーモニーホールでは(主催ではないようですが)12月にルイサダのオールショパンコンサート(繊細なショパンです:注記)もあり心惹かれましたが、やっぱりなぁ・・・。
でも、イイのかなぁ?こんなに安くて・・・。何だか申し訳ないような気がしますね。こんな田舎まで来ていただくのに(でも、別にご本人のギャラを削る訳ではないか・・・)。これだけ(2枚購入)で、家族会員の年会費3000円の元が取れてしまっています。
一昨年同じくハーモニーメイト主催での満席超(立ち見?)の演奏会で大好評を博し、再演希望が最も多かったのだそうです。
そりゃ、そうだよなぁ・・・。

 ちょうどこの時期は、今年もサンふじのリンゴ採りから発送の真只中なのですが、土曜日の19時開演(但し全席自由席)なので、作業を終えてから駆けつければイイかぁ、という次第。

 忙しい時こそ、心にゆとり唇に音楽を・・・!

【追記】
結局、リンゴ採りと選別作業を優先し、コンサートは行くことが出来ませんでした。うーん、ゆとり無いなぁ・・・。
代わりに、今やN響の正指揮者であるアシュケナージのCDのノクターンを聞きながら選別作業を続けました。

 先日、11月20日からのリンゴ採りに備え、倉庫の軒下に積んであったリンゴ箱(木箱)を運ぼうとすると、何と木箱の中にミツバチが巣を作っているではありませんか。それも結構大きな巣の様です。
そう言えば、先週リンゴ園の草刈に合わせて倉庫横の雑草も刈っていた時に、急にミツバチにオデコ(額)を刺され、慌てて家内に針を抜いてもらって流水で洗ったことがありましたが、巣のせいだったんですね。
       
 ミツバチに罪はありません。木箱の中は、きっと冬も暖かいからなんでしょうね。それに2年前だったでしょうか、ミツバチが減って問題になりましたが、自然の繁殖で、リンゴ園近くに巣を作ってくれたのですから、リンゴ農家としてはむしろ彼らに感謝をしないといけません。

 でも、リンゴ箱必要だし、どうしよう?
殺虫剤?煙で燻す?保健所に頼む?放っておく?・・・
リンゴ箱の運搬作業を中断し、アーでもない、コーでもないと考えること15分。

 意を決して、箱毎リンゴ園の隅に移動させることにしました。
ヤッケをすっぽり被り、ゴムブーツを履き、仮払い機用のゴーグルとゴム手袋等で完全防備。
リンゴ箱を動かすと、ブーンという大きな羽音と共に一斉に働き蜂が舞い立ちこちらを目掛けて攻撃してきます。それはそうでしょう、蜂たちにすれば平和を乱されたのですから。

 働き蜂の襲撃を受けながら、何とか3回に分けて巣のある箱をリンゴ園の隅まで運んで、出来るだけ元のように積み重ね、雨風を凌げるようにしてあげました。こちらだって必死です。
働き蜂の半分ほどは箱毎運ぶことが出来たと思いますが、恐らく舞い立った残りの半分ほどは、巣の異動先が分からないようで、元の場所の辺りをブンブンと飛び回っています。
巣の蜂と、どこかで8の字ダンスで交信してくれるといいのですが・・・。
 この時期、朝晩は氷点下近くまで下がりますので、巣に行けなければ寒さで死んでしまいます。働き蜂はせいぜい数ヶ月の命(?)とは言え可哀相ですが、これ以上はどうすることも出来ませんでした。ハチさんたち、ゴメン!

 幸い、翌日昼間暖かくなると、移動した木箱の隙間から出入りしているミツバチたちがいました。

 11月10日過ぎに、一泊二日で東北に出張して来ました。

 朝、松本駅を出ると、雪を抱いた北アルプスが見送ってくれます。
(梓川と奈良井川の合流点辺りの島内付近から犀川越しに望む)

初日は、長野から大宮乗換えの東北新幹線で八戸へ。
東北新幹線は12月4日から青森まで延長されますので、至るところに期待と熱気が感じられます。 

 さて、仕事の後、夕食を付き合っていただき、ある料理屋さんで食べた「煎餅汁」。八戸には4回目にして初めて食べましたが、いやぁ美味しいですね、もちもちして。素朴な味ながら、B級選手権で上位常連というのも頷けます。
 八戸にはカウンターばかりの飲食店の“小屋”が集まる「横丁」があるのですが、若い女性が呼び込みをするなど最近では観光客相手になり、値段も高くなって地元の皆さんは敬遠されてあまり行かないのだとか・・・。残念だなぁ。東北らしく素朴で気に入っていたのですが。

 翌朝は盛岡で乗換え、初めてリレー新幹線に乗車しました。始発の東京から東北新幹線「はやて」に連結されてきた秋田新幹線「こまち」です。こんな連結車両を見ると、男の子ならワクワクします(最近は“鉄女”もいらっしゃいますが)。しかし、広軌から狭軌?へ車輪巾を変えて走るなんて凄いですね。盛岡で切り離され、田沢湖線、奥羽線と乗り継ぎます。
中央線もあずさの時間短縮が難しいなら、長野新幹線にリレー新幹線を連結して、篠ノ井線(単線ですが)を松本まで走らせたら、2時間ちょっとにならないでしょうか?

 さて、初めての田沢湖線は田沢湖へ至る沿線の紅葉に映える渓谷美が見事でした。しかも、人家などまるで無い渓谷沿いに無人駅がありました。最近流行りの秘境駅でしょうか。その後、武家屋敷で有名な角館やカマクラの横手(最近ではヤキソバ?)を通ります。
角館は街中から駅舎が離れているそうですが、沿線には枝垂れ桜も見られて“らしさ”も伺えます。
初めて八戸を訪れた時も秋だったのでしょうか。乗ったタクシーの運転手さんが、問わず語りに、
「八甲田の紅葉で、本当に見事な瞬間はたった一日しかないんですよ!」
と教えてくれたのが印象的でした。

 秋田の大曲で乗換え、二両連結のローカル線に揺られていきます。途中、後三年の役の古戦場という、その名も後三年という駅があったりと、奥州藤原氏に代表される東北地方の豊かな歴史を感じさせてくれます。
 車中で車掌さんが親しげに赤ちゃん連れの親子と話をされていて、横手駅で下車した時に、車掌さんが同じく下車された若い男性に何か声をかけると、その男性がベビーカーを持って階段を上っていきました。イイなぁ、東北って。晩秋の寒さとは正反対に、人の暖かさを感じます。

 さて、岩手から秋田に掛けても沿線にはリンゴ園が点在しており、東北もこれからサンふじの収穫を迎える様です。
信州では、糖度が増すために枝を下げるように樹形を整えますが、こちらでは梨のように(棚は勿論ありませんが)上に拡がっている樹形が多く、その違いが興味深く感じられました。

 今回は出張のため駆け足でしたが、いつか家内とノンビリとローカル線で、十和田や田沢湖の紅葉を愛でたり、或いは春の桜と武家屋敷の角館を訪ねてみたいと思います。

 今年のサンふじの収穫は、仕事や就活で昨年来れなかった娘たちも手伝いに駆けつけてくれて、11月20日から家族総出のリンゴ採りになりました。

 天候だけはどうすることも出来ないのでやきもきしていましたが、幸い傘マークは消え、曇りから晴れの予報に変わりました。

 小さな果樹園ですが、矮化栽培とは言え60本近くあるので、リンゴ箱に全部で100箱超にもなるでしょうか。皆に手伝ってもらったお陰で、週末の二日間で何とか半分を採ることが出来ました。
今日は妹夫婦も手伝いに来てくれるので、今週末には残りを採り終えられそうです。今、外は昨日からの生憎の雨。でも朝には上がる予報なので、昼頃にはリンゴ採りができそうです。私は、それまで選別作業に専念。

 選別は、大きさ、色、形、傷の有無により、大玉、中玉、小玉毎に贈答用、以外のJA出荷用、自家用、加工用と選別していきます。

 今年は、周辺のリンゴ園でも例年よりも1週間ほど収穫を遅らせたようで、確かに少々色付きが甘い感じがしますが、糖度は夏の暑さのせいか、当園では最低でも15度から高いモノは18度(中にはは何と20度という鳥の“啄みリンゴ”もありましたが、ちょっと異常かも)と充分です(因みにJAのサンふじ出荷基準は13度以上です))。また、試しに切ってみると、色付きの余り良くない青めのリンゴでもかなり“蜜”が載っています。“葉取らず”(色付きを良くするための“葉摘み”作業をしなかった)リンゴでも(葉の光合成で養分が生成されるので当然ではありますが)糖度には差が無いという実験結果も報告されていますが、頷けます(ただ、出荷上は色も等級審査の対象です)。

 夜間も作業場で一人、皆が収穫してくれたリンゴを翌日の収穫作業に間に合わせるべく選別作業の続きと、更には配達日指定のお客様用にリンゴ採りと並行して発送するための梱包作業です。
      
 大変な作業ではありますが、今年も楽しみに待っていただいているお客様のことを思うと力も湧いてきます。
長女たちが2年前に農作業用にと買って来てくれたCDラジカセをお供に、この時期作業場には場違いなクラシックとジャズが夜遅くまで流れています。
      
 さぁ、もうひと頑張り!です。これから作業場に行ってきます。

 11月上旬の日曜日。家内の不在中に戻って来てくれた次女と、長女との旅行から戻った家内と、二人の慰労を兼ねてバサラに伺いました。

 年寄りにはちょっと重たいかな?とも思いましたが、今回は娘もいるので、久し振りに日替わりのコース料理を事前予約(前日まで)してから出かけました。

 そして、今回はその日のお通し(甘海老の唐揚げ)から始まりデザートに至るまで、コースの全てを撮らせていただきましたので、説明はそこそこにして全部掲載させていただきます(正しい料理名かどうかは自信がありませんので悪しからず)。こちらはいつも、素材の良さ(新鮮さ)が光ります。

       甘海老の唐揚げ(本日のお通し)
       炙り「のどぐろ」のお刺身
       白子のパン粉焼きトマトソース
       ウニと平目のすり身揚げ(かまぼこ?)と松茸と里芋の揚げ春巻き
       雅豚のハンバーグのキノコソース
       ホタテと野菜のリゾット
       紅玉とパンケーキのアイスクリーム添え 
       (以上4000円コース+お通し500円 也)

 甘エビでもこういう食べ方もあるんだ、と感心。塗された塩味(家内曰く、単純に塩だけではないとのこと)と相俟ってとても甘く感じます。
コース最初の「のどぐろ」で、もうビールでは勿体無くて、大雪渓の純米に変更。炙りが香ばしくて絶品でした。
家内曰く、味醂醤油を薄く塗って炙ってあるのではないかとのこと。ほほぉ、ナルホド、それで余計香ばしく感じるんですナ。
揚げ春巻き等は岩塩でいただきます(チェコ産と仰ってましたが、色味があるのでローズソルトでしょうか?)
 デザートの煮リンゴは、10月に差し入れさせていただいた、当園の紅玉を使っていただいたもの。
嫁ぎ先のバサラで、シェフの奥様の手によって見事に変身していて、里親として嬉しく感じました。

 今日も、大変ごちそうさまでした!

 お百姓さんの一日の時間は、日の出から日の入りが基本。従って、朝も夏は早く、冬は遅くその分一日も短くなります。
 そのDNAか、はたまた単に年を取っただけなのか(一番の理由は、5時半には犬の散歩に出ないと出勤時刻に間に合わないということもあって)、朝は4時起きし、夜は10時には熟睡というのが、ここ何年かのパターンになってしまいました。
(以前は自分で止めたのさえ気が付かぬほど熟睡していたのが、最近では目覚ましが鳴らる前に起きてしまうというのが、年を感じさせます)

 さて、秋から冬の朝4時はまだ真っ暗。でも、冬に向かって空気の澄んでくるこの時期は、星がとってもキレイです。
そして、夜明け前のベランダでコーヒーを飲みながら(寒さに震えつつも)一服していると、早起きは三文の得とばかりにチョッピリ良いことも。

 それは、時々(我家のベランダが向いている)東山方面の空にスーっと光の筋が流れます。そうです、流れ星です(夜更かしをしても見つかるかもしれませんが、やっぱり街の灯りが消えた明け方の方が空が暗くてイイかも)。
毎日と言う訳ではありませんし、ずっとベランダにいる訳でもありませんが、これまで何度となく見たことがあります。それも、思いの外しっかりとした光の線になって星が流れていきます。
この日も、そんな自然の神秘に感動の一瞬でした。

 そうだ、「何か良いことがありますように!」っと。

 さて、今日から、子供たちも手伝いに帰省して来てくれ、家族総出でサンふじの収穫を始めます。“犬の手”も借りたいくらいです(・・・が、チロルもナナも我関せずと熟睡しています)。
せっかく皆手伝いに来てくれるのに、天気がチト心配でしたが、こればっかりはしょうがありません。幸い今は星が出ていますし、傘マークは消えたようです。お天道様にお祈りしつつ、さぁて、頑張るぞー!っと

2010/11/18

382.里の秋

 秋の話題をもう一つ。

 山からは既に10月末に雪の便りがありました。雪の境界線は、この16日の朝には1500m辺りまで降りてきているでしょうか。山はもう冬ですが、里はまだ秋。我家の周辺の里山もすっかり秋色に染まっています。

 必ずしも紅葉の名所ならずとも、そこかしこに、はっとするような“秋”が見つかります。例えば・・・、
 朝の散歩道にある、古びた土蔵とハナミズキの紅葉(11月7日撮影)。田舎の風情があります。このお宅の母屋は建て替えられましたが、土蔵は私が子供のころのまま。
 同じく、あるお宅の生垣として植えられているドウダンツツジ(11月13日撮影)の燃えるような赤が鮮やかです。
 我家から急坂を上ったところにある、向山(ムコウヤマ)と呼ぶリンゴ園の一帯(以下、11月13日撮影)。
リンゴ園の道路沿いに何故か植えられている公孫樹。大分黄色く色付いてきました。
 岡田の里山も錦に彩られています。初夏の新緑では目立たなかった松の緑が、錦の帯の中で逆に鮮やかに感じます。

 11月上旬、いつもの園芸店に秋から冬への“模様替え”をお願いしました。春と秋の二回、定期的にメンテナンスに来ていただいています。
今回は平日の作業で何もお構いできず、また立会いも無理なので、希望等は事前にお願いをしておきました。

 ここ数年は、週末は殆ど農作業で潰れますので、草取りや芝刈りは自分達で何とかしていますが、植替え等まではとても手が回りません。きっと定年後でないと無理かもしれません。

 さて、翌日早朝。白みかけた頃に出かける犬たちの散歩から戻ってみると、漸く周囲も明るくなって、庭の模様替えの様子を確認することが出来ました。

 雑木林(風)ガーデンは、家内の依頼でコナラや山モミジなど、今年もバッサリ(!)と枝を落としていただきました(・・・落とされてしまいました。奥様は「あぁ、漸くスッキリした!」とご満足な様子)。
また、芝生ガーデンの二本の紅白のハナミズキは、樹形を整えていただきました。     
 花壇は、昨年の葉牡丹に替わって、いつものビオラやプリメラなどと一緒に、ピンクや赤と白のガーデンシクラメン(以前はミニシクラメンと呼ばれていたような?)が何株も植えられていて、家内は喜んでいます。
小さなピンクのエリカ(?)が愛らしく、青紫のビオラは白いガーデンシクラメン同様冬に似合いそうです。
そして、気を付けて定期的に水撒きはしてはいたのですが、屋根下で余り雨がかからないためか、遂に枯れてしまったコニファーの替わりに、伸び過ぎていた鉢植えのコニファーを地植えにしていただきました。
ハーブガーデンでは、連日の霜でバジルは葉が落ちましたが、ルッコラはまだ青々していて、12月一杯は楽しめそうです。
 秋から冬への“衣替え”も終わって、スッキリした我家のガーデンです。写真は、11月上旬の衣替え直後から先日までの様子。
ハナミズキやカシワカエデなども既に色付き或いは散り始めています。ドウダンツツジは赤く色を増しています。
あと一ヶ月もすると、クリスマスローズの蕾が顔を出すことでしょう。

 先日、第373話でご紹介した乗鞍の「中之屋」に行った際の道すがら、
「稲刻ダムの近くにも、観光客向けじゃないけど、地元の人が通う美味しいお蕎麦屋さんがあるんだって!」
と言う家内の一言。
これは聞き捨てならじ、と車を走らせながらダム周辺を探してみました。
紹介していただいた方は奈川出身で、実家に帰られる際に良く立ち寄られるのだとか。でも店の名前は覚えておられないそうです。

 その後、ネットで検索してみると、その時に当りを付けた店ではなく、どうやらここではないかなぁ?という全く別の一軒のお蕎麦屋さんが見つかりました。普通の民家風で、これでは車で走っていたら見落として、絶対に気が付きそうにはありません。

 そこで、社会人3年目で初めて休めた長女と家内が母娘二人水入らずで旅行に出かけた間に、私メを気遣って?(それとも置いてけぼり同士の連帯感で?)先週末にまた戻ってきてくれた次女と、評判のお蕎麦を求めて再度島々谷を目指すことにしました。

 気を付けながら車を走らせ、ダム湖を過ぎ稲刻の集落の中に、漸く見つけたその店『わたなべ』がありました。駐車場は3台分。幸い一台の空きスペースがあり、停めて店内へ。テーブルが3卓、12席という如何にも昔の食堂然とした小さなお店です。
お婆ちゃんが蕎麦を打ち、娘さんと二人で店を切り盛りされています。昔ながらの、蕎麦の味同様に、お二人の人柄そのもののような素朴なお蕎麦屋さんです。(壁に掛かった蕎麦も蕎麦のメニューに混じって、ラーメンとあるのが気になります)。
何となく、父が好きで何度か連れて行ってくれた、開智小の前にあった田舎蕎麦の「奈川」を思い出しました。そう言えば、あそこはオヤジさんと娘さんだったなぁ・・・(残念ながら、オヤジさんが病に倒れ閉店し、その後父は似た蕎麦を求めて浅間温泉は「かどや」に変更)。

 早速(温蕎麦もあります)、盛りの大(550円)を二つと、そばがき(500円)を注文。

 最初に、お皿に一杯の自家製の漬物(+唐辛子の漬けたのも)をサービスで持って来てくれました。うーん、ビールに合いそうです(ビール抜きで、漬物をつまみつつ待つこと暫し)。
チョッピリ不揃いな昔ながらの二八の蕎麦は、しゃきっと締まっています。そして、てらいも無く片手鍋のまま出されたそばがきは、蕎麦粉の味が口の中に広がります。娘は苦手と言うので一人でいただきました。つゆではなく少し濃い目のタレに付けていただきます。
娘が何となく物足りなさそうだったので、並盛り(450円)を追加。最後に、どろどろの蕎麦湯もいただいて、二人とも満腹です。並盛り2枚が適量でしょうか。それでも900円です。今回は二人で、〆て2050円です。安いなぁ!
 昔、お婆ちゃんがやっていた頃の「野麦」もそうだったように、きっと、世間での評判や、講釈や、格式や、そんなことには無頓着に、自分の打つ蕎麦をただ喜んで食べてもらいたいだけ。そんな「渡辺」のお婆ちゃんの声が聞こえてきそうな蕎麦でした。
観光客の皆さんも評判を聞きつけてか、次々と来られて外で待っておられますので、地元客は早々に店を出ることにしました。
「お待たせしました」、「あっ、どうもスイマセン」
 帰路、島々谷の紅葉が見事でしたので、島々宿の道路脇の空き地に車を停め、写真を撮りました。
この谷を遡ってウェストン郷も上條嘉門次の案内で歩いて行ったであろうこの道は、上高地へ至る徳本峠に続いています。

 間もなく、上高地は雪に閉ざされた静寂な時を迎えることでしょう。

 以前も取上げたことがある、ビッグコミック・オリジナルに連載中の北アルプスの山岳救助をテーマにした石塚真一『岳-みんなの山』。

 山に常駐する(住む)三歩以外の登場人物の殆ど(管轄の警察署など)が松本ですので、この街もしばしば登場します。

 そして、この「岳」が実写として映画化されることになり、松本市内などでロケが行われているそうです(相澤病院や第377話に登場した居酒屋「萬来」も)。主人公の島崎三歩役には小栗旬、相手役「クミちゃん」に長澤まさみという配役だとか。うーん、個人的には三歩のイメージには佐藤隆太なんですが、ネ。因みに、松本市の観光ポータルサイト(自治体のそれとしてはお世辞抜きにかなり良く出来ていると思います)には「岳」の応援サイトが設けられていますので、興味ある方は是非どうぞ。
 http://youkoso.city.matsumoto.nagano.jp/

 公開は2011年だそうですが、今から楽しみです。

 そして更に、来春からのNHKの朝ドラが、安曇野の蕎麦屋を舞台にしたものとかで、主演の井上真央始め現地でのロケが行われています。松本も登場するそうです。朝ドラでの松本は『水色の時』(確か、大竹しのぶと原田美枝子のデビュー作では?ちょうど高校二年に上がる前の春休みで、部活の春合宿の時に、高校の講堂前で入試の合格発表のシーンを撮影してましたっけ)以来とか。
また、松本の救急病院(小説では「本庄病院」。場所的には相澤がモデルか?)を舞台とした小説『神様のカルテ』も、櫻井翔と宮崎あおいのコンビで映画化され、市内の放光寺等で撮影されて既にクランクアップしたとか、このところ松本はロケブームというかロケ流行りです。
(松本市も、フィルム・コミッションとして、積極的に撮影を受入れ、支援していることもその背景にあると思われます。また『白線流し』の時のように、新たな“名所”が生まれると良いのですが・・・?)

 先日、家内の知り合いの方(少々ご年輩です)が散歩をしていると、人だかりがしていて、何があるのかと集まっていた人に聞いたところ、
「嵐が来るんですよ!」
とのこと。それを聞いたその方曰く、
「えっ、こんな天気が良いのに“嵐”が来るんですか??」
いよっ、座布団一枚!
しかし、いいなぁ、この大らかさ・・・。天下の嵐も形無しです。
きっと櫻井翔もビックリするでしょうね。
(但し、ご本人は本当に嵐をご存じなかったようです)
【追記】
映画『岳』は、2011年5月7日から全国の東宝系にて一般公開とのことです。

 日曜日のお昼過ぎ、長女との母娘水入らずの旅行から戻る家内を迎えに、松本駅に行きました。
お土産含めて荷物がたくさんあるので、ホームまで迎えに来て欲しいとのことで、早めに着いて指定号車の所で列車の到着を待ちました。
      
 スーパーあずさが到着する数分前に、お揃いの作業着に身を包んだ年輩の女性の皆さんが、それぞれの号車のドア付近に整列して待っています。
おそらくJR東日本の子会社?であろう、社内清掃をされる年輩のパートの「おばさん」方です(因みに、夜は、勤務時間やシフトの関係か、或いは別の会社か、作業着も違う「おじさん」たちです)。

 見慣れた藤色の下りのスーパーあずさが、定刻通りに13号車を先頭に松本駅のホームに滑り込んで来ました。
すると、社内清掃の皆さんは、ふかぶかと一斉にお辞儀をして、到着する電車(乗客)を迎えるではありませんか。しかも、その“45度”のお辞儀は、最後尾の1号車が来て列車が停止しドアが開くまで、微動だにせずに続いたのでした。

 いつもあずさに乗って終着の松本駅に帰ってくる時(殆ど夜間ですが)は、それほどホームの様子を注視しているわけではありませんので、そんなことが行われているとは全く知りませんでした。おそらく、乗客の誰も気が付かないかもしれません。そして、それは単に作業マニュアル通りの所作なのかもしれませんし、もしかしたら、松本駅だけではなく、どの終着駅でも同じように行われているのかもしれません。

 しかし、じっとお辞儀をして佇んでいる皆さんの様子を初めて目にし、仮に儀礼的であったとしても、その姿からは、出迎えの、或いは乗車への感謝の姿勢が感じられて、何だかとても心が暖かくなりました。
「そうか、こんなことが毎回毎日ホームで繰り返されていたんだ。」

 一人だけで感じ入っているのが何だか勿体無くて、共有させていただきたくなりました。

 特急あずさで終着の松本へ来られる際は、松本駅到着寸前、ほんの少しホームを注視してみてください。
きっと、黄色いヘルメットと藤色のユニフォームで、45度の姿勢で出迎えてくれる「おばさんたち」がいらっしゃる筈です。

 (前話に引き続き)10月下旬のとある木曜日。この日ばかりは、就業後、皆ダッシュで上諏訪駅へ向かいました。
松本へは18時半過ぎに到着。前話掲載の企画案に沿って、先ずは19時閉店の珈琲美学「アベ」へ。

 閉店まで20分もありませんでしたが、事前にお電話でお願いしていたということもあって快く対応いただき、女性陣はアベの看板メニュー「モカパフェ」をご注文。
飲む前なので何人かで分けるのかと思いきや、さも当然!という感じで個別にオーダー。さすが・・・。3つ並んだ様は壮観です。本日の(女性陣にとっては)ハイライトでしょうか。
昔の記憶では、下の部分には甘さ抑え目のコーヒーゼリーが入っているので、見た目よりもアイスの量は少なくあっさりしています(筈です)。
こちらは、久し振りの濃い目のアベのコーヒー。酸味の強い「まるも」とは違いマイルドです。コーヒー豆はモカならぬコロンビアかな?
閉店時間をオーバーしてまで対応いただいたマスター、本当にありがとうございました。

 さて、アベを後に10分ほど歩いて、西掘の「たけしや」へ。
まだ早いのか、我々だけ。基本のヤキソバと、生卵入り(マイルドになります)、そしてビールを注文し漸くの乾杯!ヤキソバは皆で小分けしていただきました。やっぱり、時々は食べないとなぁ!

 その後また駅前に戻り、居酒屋「萬来(バンライ)」へ。
ここは、地元のサラリーマンだけではなく、登山客にも評判という店。映画「岳」のロケにも使われたようで、その時の出演者とスタッフ一同の集合写真が飾られていました。中央には主役の島崎三歩役の小栗旬が・・・。女性陣は感動の様子。
タイミング良くテーブル席が空き、注文は、お目当ての山賊焼きと馬刺しの三種盛り。専門店ではなく居酒屋なので、山賊焼きも源太などに比べると小さめです。
最近市内では、「山賊焼き」を松本B級グルメとしてPRしようという“町興し”に協力し、提供するお店(中にはイタリアンのお店や、山賊焼きバーガーまで)が増えているそうです。でもB1グランプリは厳しいかな?唐揚げや竜田揚げ、またチキンカツとどう差別化するのか?
むしろ個人的には、松本B級と言えば(一店舗だけでは無理ですが)「これを食べずして・・・」という意味で、やっぱりたけしやのヤキソバかヤマナミのスパゲッティーが代表格。もし町興しとしてなら、今では松本市となった奈川の「とうじそば(投汁蕎麦)」を普及させた方が、観光的には松本らしくて良いかもしれませんね。
さて、萬来では、お通しに出てきた「山三つ葉」のお浸しに個人的には感動。初めて食べましたが、芹や葉山葵ともまた違うシャキシャキした食感が出色でした。

 最後に、皆まだ食べられそうと言うので、串揚げの「夢屋」へ。
繁盛したのでしょう、すぐ近くの昭和横丁から移転し拡張。こちらも混んでいます。
ただ、以前連れて行っていただいた、本場大阪は阿倍野の庶民的な串カツ屋さんや、こちらは少々高級な伊勢丹別館の「串の坊」に比べると、種類が貧弱、少なすぎ。しかも、アスパラが一本揚げではなく、またレンコンも肉の包み揚げに非ず、ただ厚めのレンコンを揚げただけ・・・。ウズラの卵もメニューに無いではありませぬか。
確かにソースは二度付け禁止。しかし、大阪風を名乗るなら、ちょっと許せんなぁ!本場に対し失礼です。これなら駅前の「楽珍」の方が種類も豊富で遥かにマシです。
皆、満足はしてくれたようですが、個人的には最後にチョッピリ残念でした。

 この日は平日でしたが、居酒屋はどこもビックリするほどの盛況ぶり。少しは景気が戻って来ているとイイですね。

 さて、ヤマナミを除き、松本B級は一応終了。ヤマナミが続くように、大昔の高校生諸氏は一度は行ってあげないといけません。
ところで、今度はC級でしょうか?
キッタナイけど、本当に美味しいレバ焼があるんだけどなぁ・・・。でも、誘っても誰も来ないかも?

 以前、第116&117話でもご紹介した“松本B級グルメツアー”を、少々中味を変えて、前回の有志とは別に、改めて職場メンバーで実施しました。
以下、メンバーに配布した当日の企画案です。

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【松本B級グルメツアー ご案内】
(1)珈琲美学 アベ ・・・ モカパフェ 
巨大なモカパフェが昔から有名。コーヒーも濃い目で個人的には好み。漫画本も置いたるし~♪ ホントはデザートとして一番最後にしたいのですが、ナンセ19時閉店とのこと。
女性軍の別バラを信じて、先ずは前座で女性陣のみモカパフェで本日のスタートとしたいと思います。男性陣はコーヒーと漫画で暫しお待ちくださいマセ。
(2)たけしや ・・・ ヤキソバ 
昔の運動部系男子高生御用達のお店。キッタナかったお店が、ずーっとヤキソバ一本で勝負して来て、今や改装しこんなに綺麗になったのは立派の一言!(寿に支店まであるそうな・・・)。ギトギトの太麺(昔の真っ黒い麺ではなく、今は普通の中華麺)に甘めのソースが独特です。
(3)居酒屋 萬来 ・・・ 山賊焼 
松本B級グルメの代表格「山賊焼き」。
松本では、附属中近くの「源太」や浅間の「河昌」が昔から有名ですが、今回は駅周辺で食べられる所ということで、居酒屋「萬来」で山賊焼きと馬刺しナンゾで景気付けの一杯
(4)夢屋 ・・・ 大阪風串揚げ 
ソースの二度付け禁止ィー!
食べられない食材があったら、事前にお申し出ください。
(5)駅ビルのスタバ?・・・お帰りの電車の時間調整

*スパゲッチー(パスタに非ず)のキッチン・ヤマナミは、本日都合により18時閉店(マスターは「来てくれるなら7時過ぎまで待っていてあげるよ」と仰っていただいたのですが、生憎当日は夕方会合があり早仕舞いをされるとのこと)で断念。アベと同じ駅前通りのNOVAビル地階にありますので、興味ある方は休日のランチにでも是非お試しください。昔懐かしいナポリタンなど。松本のB級グルメとしては「たけしや」と共に外せません。
ここは大昔の高校生が懐かしんで通う店。マスターが体調を崩され、閉店・再開を何度か繰り返されて現在の場所へ移られた由。高校以来?久々に今回事前確認に伺ったら、あのダンディーだったマスターもさすがにお年を召され、カウンターにポツンとお独りで・・・。チョッピリ悲しくなりました。
昭和も遠くなりにけり・・・。でも、一日でも長く頑張って続けてください!
                                            以上
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 当日の様子は、次回ご報告いたします。

 前日から快晴だったための放射冷却か、一昨日4日の朝は冷え込みました。

 松本では今シーズン初めて氷点下(-1℃)を記録したそうで、朝起きてみると一面真っ白。初霜でした。
 家内が不在のため、チロルとナナの二匹を連れて散歩です。別々に行く時は、勝手気ままな彼(女)らも、2匹一緒の時は分かるんでしょうね。お互いがマーキングなどをすると、もう一匹がちゃんと待っています。年功序列か、ナナは必ずチロルを先に行かせて一生懸命後に付いて行きますし、チロルは、何かあると立ち止まってはナナを待っています。

 家に戻ってから慌しく彼らの世話をして、自分の準備をして、ナナを母に預けてと車に乗り込みました。いつもの電車に何とか間に合いそうです。

 11月に入ったので、何本かの川(市内中心部を流れる女鳥羽川、田川、薄川と小さな東西大門沢川、そして少し郊外には奈良井川と梓川)に囲まれた松本の市街地は霧の季節を迎えています。

 この日も、深志ヶ丘を下っていくと、市街地はスッポリと霧の中。霧が無ければ見えるであろう雪を頂く北アルプスも、市街地からは全く望めませんでした。
 昨日、翌5日は氷点下にこそなりませんでしたが、1℃まで下がり連日の降霜。車の屋根も真っ白でした。でも連日の寒さで水温も下がったのか、霧の発生はありません。

 朝5時20分。朝忙しいので2匹を連れて早めの散歩へ。
東山の白み始めた空に、糸を引いたように細い三日月がちょうど上り始める頃でした。下弦の月でしょうか。
【追記】
そして、今朝6日。快晴でしたので、いつもの城山々系のビューポイントへ出かけてみました。
すると、市街地では薄かった霧も、奈良井川と梓川に囲まれた一帯を中心に松本平はすっぽりと濃い霧の中。
北アルプスが霧の海に浮かんでいるようでした。
幾つか写真を掲載しておきます。


2010/11/04

374.北ア冠雪

 久し振りに青空が広がった11月2日の火曜日。
秋晴れと言うより、最近の寒さで何となく感じは冬空・・・。

 このところ、ずっと雨や曇りの日が続き何日振りでしょうか、松本駅に近付くと、本当に久し振りに北アルプスの峰々が望めました。
そして、シンボルの常念岳を始め、前山上部の2000m近くまで白く雪化粧です。松本平から望む半年振りの雪の頂きに、電車に急ぐのも忘れ、駅のアルプス口(西口)から暫しうっとりと眺めていました。
初冠雪の便りは既に先週27日にありましたが、松本平から雪を頂いた峰々が望めたのは、少なくとも私自身は今朝が始めてです。

 確かに何も無い街かも知れませんが、神々しいばかりの景色を眺められるからイイんですよね、この街は・・・。

 信州松本に暮らす幸せをチョッピリ噛み締めながら、改札口へ急ぎました。

 一週間ほど前の週末に、授業が空いて次女が帰省。
少しはノンビリしたかったでしょうに、敵もサル者、家内に命じられ、土曜日一日リンゴの葉摘み作業を手伝ってくれました。
そこで、翌24日の日曜日も午前中の作業の後、慰労に乗鞍高原の十割蕎麦の「中之屋」へ。母も一緒に紅葉見物も兼ねての小ドライブです。

 島々谷を過ぎる辺りから、少しずつ木々が色付き始め、稲刻(イネコキ)、水殿(ミドノ)、奈川度(ナガワド)と梓川渓谷沿いに連続する東京電力の3つのダム湖周辺は、登るに連れて次第に色付きも増していきます。まだ黄色が中心で、紅色が濃さを増すのはこれからのようです。どうやら10月下旬頃が見頃でしょうか。

 乗鞍までの沿線で一番の景観は、前川渡から乗鞍方面へ左折し、梓川の渓谷を渡る橋の周辺。ダム湖の(奈川渡ダムで堰き止められた一番大きなダム湖で、梓湖と命名されています)渓谷美に紅葉が映え、神秘的です。錦の屏風のような盛りの頃はさぞかし見事でしょう。
娘曰く、「ミステリードラマのロケに使えそうだナ!」。何でも、殺人事件のモチーフに、紅葉を背にして橋からダム湖に人が転落する場面とか・・・。ナルホドね、でも色気無いなぁ。

 途中「お腹がすき過ぎて気持ちが悪い!」と恒常的欠食児童が一名。カーブの続く山岳路で、運転のせいにされても困るので、止む無く稲刻(蕪菜の一種の稲刻菜と風穴で有名)の道の駅に立ち寄り食物補給のため休憩。ゆっくりと走ったので、松本の自宅から1時間半弱で乗鞍高原へ到着しました。松本ICからなら1時間のドライブでしょうか。

 既に2時近いと言うのに、番所バス停前の「中之屋」の駐車場は県外車で満杯でした。道路を挟んだ酒屋さんにも駐車可とのこと。
こちらのお蕎麦は、昔から蕎麦栽培が盛んな乗鞍高原産の地粉(蕎麦は自家栽培もされています)を使った十割そば。セイロではなく、お皿に盛って出されます。この10月20日から新蕎麦になったとのこと。

母と娘がそば定食(2000円)。家内と私がおろしそばセット(1500円)。
定食には、皿そばと岩魚か山女の笹焼(内臓を取ってお腹に味噌を塗った岩魚を笹で包んだ蒸し焼き。味噌とほんのり笹の香が効いています)に煮物などの小鉢が。おろしそばセットは、とろろの冷たい汁そば(温もあり)と自家栽培という辛味大根の皿そばという2種類の蕎麦が堪能できます。また定食も+200円の「松」コースは小振りのとろろそばが追加されます。そして、どちらも自家製の漬物が付いています。
蕎麦はつなぎを使っていないのに、短く切れていないのが凄いですね。これも水車でゆっくりと挽いているので、粉が熱を帯びないからなのだそうです。そして、十割の新蕎麦らしくそばの香りもして、美味しくいただきました。欠食児童も満足のご様子。最後に濃い目の蕎麦湯もいただいて、ご馳走さまでした!

 家族全員で対応されているようですが(注記)、忙しい中にも、洗練された有名店とは違うほのぼのとした田舎家の雰囲気で、また手際も良く、列になっていてもそれ程待たずに食べることが出来ました。蕎麦を待つ間、お茶と一緒にたまり漬の野沢菜が「お茶うけ」に出されます。
 そう言えば、「中之屋」は二ヶ月ほど前にテレ東系BSジャパンの「いい旅、夢気分」の中でも紹介されていましたっけ。
本棟造りを模したお店の横には、今も粉挽きに使われているという水車小屋が。蕎麦栽培の盛んな乗鞍には、昔15基ほどの水車があったそうですが、機械化の中で、今ではここだけとか(注記)。
 生憎の曇り空で乗鞍岳山頂は望めませんでしたが、周辺の紅葉も見事で、新蕎麦を満喫することが出来ました。

 梓川渓谷の紅葉の盛りに、またもう一度来たいものですね。
      
【注記】
こちらの蕎麦は、18歳で嫁入りし80歳で亡くなるまで蕎麦を打ち続けた、その道60年という中之屋のお婆ちゃん直伝とか。
乗鞍地区も、昔は蕎麦が主食だったと言いますので、農家のお嫁さんは蕎麦打ちが出来て一人前だったのでしょう。
地元で蕎麦集落として有名な山形村の唐沢地区も同様で、昔の民家で蕎麦を出す14軒中1軒を除いて、今も皆女性が昔ながらの蕎麦を打っています。
なお、店横の水車小屋はお客様に見ていただくために数年前に建てられたそうで、実際毎日粉を挽いている水車小屋は店舗から少し離れた所にあるのだとか。