カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 時代小説ブームなのか、最近文庫本でも色んなシリーズが出版されています。

 出張の折、新宿の本屋さんで“本屋さんの薦める本(R-40本屋大賞受賞作品)”として、1年程前に見かけた高田郁著『澪つくし料理帖』(時代小説文庫)。

 失礼ながらその作者名も聞いたことが無く、気になりましたが、元来の保守的性格ゆえか購入しそびれていると、その後も評判を呼んで第3巻まで発刊されたようで、(読む本が切れかけた)前回の出張で試しに買ってみようと思ったら、今度は生憎品切れ。

 老舗の本屋さんも減ってしまった松本では、ずっと見かけたことが無かったのですが、先日漸く店頭で発見。早速試しに第一弾『八朔の雪』を購入してみました。

 江戸の人情味溢れる下町情緒が描かれ、活き活きとした市井の様子が目に浮かんできます。さすが著者は元漫画家です。
また、江戸時代の料理屋を舞台に、周囲の人たちに支えられながら逆境に負けずに頑張る、うら若き女料理人(澪)が主人公で、一話毎に異なる料理がテーマという「料理帖」の設定も意外性(新規性)があり、料理好きとしても興味をそそられます(巻末に、登場した料理のレシピが添えられています)。
現代のように温室栽培や保存が利かない時代ですので、道端の摘み草に至るまでの旬の食材への拘りが、より一層「本来の」季節感を強調しています。
そして何より、女流作家らしく、文章全体がしっとりしています。

 シリーズ化をふまえて(?)、随所に“仕掛”もされていて、展開に飽きずに読めそうです。それに決して水戸黄門や浅見光彦ほどではありませんが、いざという時には“お助け”もあるため、決着への安心感もあります。
描写が絵になり易いので、いずれどこかの局でTVドラマ化されるかもしれませんね。

 ただ、それ程ストーリーや人物設定が複雑ではなく、構成やスケール感という点では物足りなさも無いではありませんが、逆にそれ程悩まずに簡単に読めるので、特に(疲れた)仕事帰りの通勤向けかもしれません。
早速品切れにならぬうちにと、第三弾まで(『花散らしの雨』と『想い雲』)買い増ししました。これで、暫くは通勤時も大丈夫です。

買って帰って、家内に紹介したら、
「ああ、昔のNHKの朝ドラだっけ?」
「ちゃう、っちゅうに!」
野田?のお醤油さんでしたっけ?全く関係ありませんので念のため。