カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 松竹歌舞伎座の建て替えに伴う閉鎖が大きな話題になりましたが、それと比べて社会的には殆ど話題にもならずに、新宿にあった厚生年金会館が3月末で閉館したそうです。
唯一、先月の日経の文化欄で元館長の方の回想録を読み、閉館を知りました。記事に拠れば、どちらかと言うと上野の東京文化会館がクラシックで厚生年金会館はポピュラーという役割分担だったとか。

 30年程前の独身時代、どうしても聴きたいコンサートがあって、まだ「遅れて」東京で学生をしていた高校時代の友人に無理を頼んでチケットを買ってもらい、彼と一緒に厚生年金会館へ聴きに行きました。

 それは、初代メンバーによるキングズ・シンガーズの来日初公演。
LPレコードを持っていて、合唱をやっていた人間として、その惚れ惚れするようなハーモニーの見事さに唖然とし、どうしても聴きたくてわざわざ松本から出かけていきました。
バードやラッソ等のマドリガルやモテットばかりでなく、クラシック風にアレンジされたビートルズ・ナンバーなど本当に見事な演奏でした。そして、この新宿厚生年金のコンサートの模様は、後日NHK-TVでも放送されました。

 翌日は会社があったので、終わってから、当時まだ走っていた「山男」向けの23:59新宿発の夜行列車に乗って、朝7時過ぎに松本へ着いてそのまま会社へ直行しました。

 その後は、独身時代のように東京までコンサートに行くような時間的な余裕も根性も、そして何より体力もなくなりましたが、厚生年金会館の大ホールで生で聴いたキングズ・シンガーズのハーモニーは、ずっと記憶の中に残っています。(写真は、キングズ・シンガーズ最初のLPと新宿厚生年金のコンサートを思い出させるロンドンでの結成10周年ライブ・コンサートの二枚組LP。確か、聴衆による10周年を祝福する“Happy birthday to you” の合唱が入っています。粋だなぁ)

 15年程前、そのキングズ・シンガーズが岡谷のカノラホールへ来演したので、当時合唱を始めた小学生の娘達と3人で聴きに行きました。
平日でしたので、家内が松本駅で電車に乗せて見送ったとは言え、小学生二人で岡谷駅までやって来て、上諏訪から仕事帰りの私と岡谷駅で待ち合わせ。先に着いて心配していたら、小さな二人がしっかりと手を繋いで、きょろきょろしながら電車から降りて来たのを見つけて、ほっと安堵の胸を撫で下ろしたのを覚えています。

 下の娘は、不安だったんでしょうね。小さな“大冒険”に疲れたのか、コンサートの途中でスヤスヤ眠っていましたっけ。
上の娘は、目を輝かせて演奏に聴き入っていました。ウン、親子だなぁ・・・と、独身時代聴きに行った新宿厚生年金でのコンサートを思い出しながら、一人悦に入って聴いておりました。

 よほど気に入ったのでしょう。その後、キングズ・シンガーズのビートルズ・コレクションのCDが棚から消えました。