カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 先月下旬の朝日新聞文化欄に紹介されていたピアニスト、巨匠アルド・チッコリーニ氏(嘗てのサティ・ブームの仕掛人とか)の言葉。

「日本の聴衆の静寂は最高の報酬だ。西欧が忘れ去ろうとしている美しい伝統を、日本が受け継いでくれている。そう確信した。」

 そう言えば、先日のNHK-FMでのN響定演の中継の中で、N響名誉指揮者であるマエストロ・ブロムシュテット氏が、リハーサル中に日本を誉めながら「ヨーロッパで演奏するのは最早疲れる。」という主旨の発言をされたことを受けて、当日解説の作曲家である池辺晋一郎氏曰く、

「そう言えば、40年程前、欧州のクラシック音楽家の間で『100年後は、欧州から消えた伝統的なクラシック音楽の演奏会を聴くためには、日本へ行かなくてはならなくなる。』という説がまことしやかに流布されたことがある。」

 シワブキ一つしない観客席を「だからクラシックは肩が凝る。」と敬遠する向きも当然あろうかと思いますが、日本贔屓の演奏家が多いことからも、真摯で暖かな日本の聴衆がクラシック界のみならず世界の演奏家に愛されていることも、また紛れも無い事実だと思います。

 但し、一度だけ聴いたことがあるウィーンのムジーク・フェラインザールでの演奏会(フィガロでしたので、劇中でも笑ったりも出来ます)も、また赴任中毎月のように仕事帰りに(当時から欧州流の夜8時開演で、オフィスから徒歩3分)一人で聴きに行ったシンガポール交響楽団の演奏会(何しろ隔週で定演を行い、しかもA席はS$10=当時で700円弱、S席でさえ15$で聴くことができました)も、20年近く前とは言え、日本とさして代わらぬ観客席風景だったと思いますが・・・。

 名演奏のCDもイイですが、やっぱり生演奏には敵いません。CDを何枚も買うなら、そのお金で一回生の演奏会に行くべきです。二次元と三次元、今風に言えば、平面と3Dの差程違う、とでも言ったらいいでしょうか。

 斯く言う私も、そろそろ演奏会に行きたくなりました。
 今迷っているのは、10月にハーモニーホールで行われる上岡敏之指揮ヴッパタール交響楽団の松本公演。
チャイコのバイオリン協奏曲と3番英雄。曲目よりも指揮者に興味があり、2007年に続いての2度目の来日公演というドイツ(注記)のオケそのものは、まだ日本ではそれ程知名度は高くありませんが、せっかくハーモニーメイトにもなったので、聴きに行ってみようかと思っています。でも、前回の初来日時に指揮振りが評判を呼んだとは言え、ネームバリューからすると9000円はチト高くないかなぁ・・・?ここ、ハーモニーホールは800席しかないため、フロント席を除き一律料金です。メイト価格は8000円。このホールの素晴らしいのは、高校生以下は4000円の設定。若い聴衆を増やすのに良いことですね。因みに、先日あった松本県文でのシュトゥットガルト放送響は確か11000円でした。録音嫌いの(今は亡き)チェリビダッケならなぁ・・・って、こんな田舎に来るわけありませんが(ただし彼がこのオケを振っていたのは30年前で、晩年はミュンヘンフィル)。
あぁ、OEK良かったなぁ。また松本に来ないかなぁ。
・・・などと、優柔不断にグダグダ悩む日が続きます。はぁ、情けな。
【注記】
ヴッパタール市は、ドイツ西部ノルトライン=ヴェストファーレン州にある、ルール地方の工業都市。州都は日本人には馴染みの(日系企業のドイツ法人が置かれる)デュッセルドルフ。市出身の指揮者にハンス・クナーパーツブッシュとギュンター・ヴァント。オケは150年の歴史を持つという。