カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 最近春霞がかかる日が多く、遠くが霞んでいます。
 この時期思い出されるのは、文部省唱歌(作詞高野辰之、作曲岡野貞一)『朧月夜』。同じく『故郷』の作詞でも知られる高野辰之は、北信の中野市(旧豊田村)の生まれで、一時隣の飯山の小学校で教員をしていて、千曲川沿いに広がる菜の花畑(一般的に菜の花はアブラナを指しますが、ここ飯山では野沢菜です)の記憶がこの歌のモチーフになったと言われています(また、因みに作曲者の岡野貞一は松本深志高校の校歌も作曲しています)。

 この朧(おぼろ)月というのは、春に黄砂で霞んだ夜の状態なのだそうですが、自然現象で説明されると何だか現実的過ぎて幻想的な雰囲気が無くなってしまうような気がしてしまいます。個人的には、特に二番目の、

 『里わの火影(ほかげ)も、森の色も、
  田中の小路をたどる人も、
  蛙(かはづ)のなく音(ね)も、かねの音(おと)も、
  さながら霞める朧月夜』

・・・という歌詞は、何となく我家の近くの田んぼ道(今はチロルの散歩コース)を思い浮かべてしまいます。
また、一番の歌詞にある「菜の花畑に入日薄れ」からは、何となく

 『菜の花や 月は東に 日は西に』(与謝蕪村)

という蕪村の有名な句も連想されますね。

 幼い頃、“おじいちゃん子”だった私は、毎日リンゴ園に花摘みや摘果作業に行くのに連れて行かれ、リンゴ園を一人遊びで駆け回っては、暗くなって夕方家へ帰る道すがら、(たぶん)遊び疲れて負ぶってもらった祖父の背中から見ていただろう心象風景。
(写真は夕方ではなく、朝の散歩の途中に見かけた菜の花と霞む東山々系)

きっと誰にでも、そうした幼い頃や、ふるさとの心象風景を思い起こさせる歌があるのでしょうね。

五月連休中、千曲川の河川敷に黄色の絨毯のように拡がる飯山「菜の花公園」は大勢の花見客で賑わったとか。