カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
10月も下旬となり、里山も大分色付いてきました。ここ松本では朝晩の最低気温も軽く10℃を下回っています。
リンゴは糖度(第154話を参照ください)のところでも書いたように、光合成によって葉で作られた澱粉が実で糖分(ブドウ糖)として蓄えられ、10℃を下回って日光に当ると赤い色素(アントシアン)に変わることで色付いていくのだそうです。従って、甘味(糖分)の元は葉で作られますが、色付きはある温度条件(着色適温)の下(ふじは10℃以下)での太陽光の働きによります。
ネット検索をすると、リンゴ農家の中には『葉取らずリンゴ』として宣伝しているところも見受けられますが、確かに葉で養分が作られますので、葉を取らない(=葉が多い)方が(赤く着色していなくても)糖度は上がることになります。しかし、一定の糖度になれば、やはり赤く色付いたリンゴの方が(青いリンゴより)美味しそうに見える訳で、栽培農家としてはジレンマを感じるところです。また無袋(袋をかけない)サンふじの方が袋を掛けたもの(有袋)より糖度は高い(注記)のですが、有袋の方が肌が直前まで保護されるため、見た目は綺麗になります。
一方で、袋掛けや葉を取ってリンゴ一つ一つに日当たりを良くする葉摘みも、農家にとっては重労働であることは間違いなく、特にリンゴ栽培に限らず高齢化と後継者不足が進む農家にとって、省力化も考えれば(それで売値が変わらないのであれば)どちらもやらないに越したことはありません。個人的には、恐らく無袋や葉取らずにも背景にはそうした要因もあるのだと思っています。ただ、葉摘みと言ってもリンゴの着色を妨げる葉を取るだけで丸裸にする訳ではなく、十分な葉が残っているのは言うまでもありません。
また出荷時には(JA出荷基準)糖度と色付きの両方共(さらに大きさや傷の有無なども)センサー等でチェックされますので、葉摘みをするのとしないのと、どちらが良いのかは一概には言えずなかなか難しいところです。一言で言えば単純に「赤くて甘いリンゴ」がいいと言う他ありません。
ネットで検索すると、リンゴの本場である青森県の小学校の無袋・有袋・無袋葉取らずの3種類を比較した面白い実験(注記その2)が掲載されていました。子供の方が感性が鋭いので興味深く拝見しました。興味ある方は是非ご覧ください。
ただ、糖分は葉だけの問題ではなく、そのリンゴの生えている土壌や気候条件などに先ず左右されることは言うまでも無く、あくまで同じ条件下で且つ同じ木で見た時の比較でしかありえません。
さて、当園でも平日は葉摘みを母がやってくれました。良く日の当る枝は不要ですが、木によって、また枝によって日が当りにくいリンゴは一枚一枚日陰を作っている葉を摘んで日当たりを良くしてあげます。
また中生種リンゴの発送も終わり、久し振りに家内が娘のところに上京して不在の週末には、一日かけて今シーズン最後のリンゴ園の草刈をしました。除草剤を使えば楽ですが、茶色に枯れたリンゴ園を見るのは忍びなく、大変な作業ですが、春から最低でも毎月1回は草刈をしたでしょうか。これで何とか来月のリンゴ採りの準備ができました。
残りの葉摘み作業中、葉に隠れてまだ青いリンゴでムクドリが啄ばんだものがあり、「へぇ~」と思い試しに採って糖度計で計ったところ既に15度ありましたので、今年も順調に甘くなってきているようです。
あと一ヶ月弱、11月20日頃には例年同様サンふじの収穫が迎えられそうです。
今年は、娘達が海外出張やゼミ活動等で11月の三連休には帰れそうも無いとのこと(特に次女は家内よりも力もあり“働き者”なので痛手です)。少し人手不足が心配ではありますが、妹夫婦も例年同様また今年も手伝いに来てくれそうなので、皆で頑張って「太陽と土の恵み」を一つずつ大事に収穫したいと思います。
【注記】
ある糖分以上になると、糖分に変わらず透明な澱粉質となって蓄えられ、これが「蜜」と呼ばれます。従って、「蜜」そのものは甘くはありませんが、結果として蜜が載っていれば糖度が(十分なほどに)高いという間接的な証明になります。言わば甘いリンゴの必要条件ではなく十分条件です。
【注記その2】
「3つのりんごを比べよう」青森県弘前市立草薙小学校
http://www.hi-it.net/~kusanagi/kodomo/h14-5nen/5-3ringo/5-3ringo1.htm
(リンクの貼り方が分からず、お手数ながら上記URLもしくは「りんご糖度」を頼りに検索ください)
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