カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
今回、長野県を直撃した台風18号は、(長野気象台に寄れば)3000m級の中央・南アルプスにぶつかって発生する気流の影響で、当初予想(南北縦断)とは進路を変えて、県の南部(飯田・伊那)から諏訪、上小地方(上田・小県地方)へと抜けていったために、幸い松本は殆どリンゴの落果などの被害(近くの農家の方の話だと、TV報道で同じ松本でも今井地区では少し落果被害があったとのことでしたが)はありませんでした。一方、台風進路と重なった伊那谷では、松川町などで落果被害(県全体の農業被害は速報値で約2億円とか)が出たそうです。夕方のローカルニュースで、強風で落ちた「ふじ」を片付ける農家の方々が報道されていましたが、「思ったほど(全滅も覚悟した割には)の被害ではなくてやれやれですわ。」とのコメントが流れていました。
(そうは言っても実際には)冬、雪の中から始まった剪定、春の花摘み、摘果作業と一年近くも手塩に掛けてきた結果が、一瞬の台風での落果では、農家の方々は何とも遣り切れないと思います。
10年近く前、やはり「ふじ」が色付く前に長野県を台風が直撃し、松本でも50mの瞬間風速を記録して、本町のビルの外壁か看板が落下したことがありました。その時はここ岡田地区でも「ふじ」がほぼ全滅し、(熟す前で)加工用にもならないため、休みの日に父を手伝って一緒に拾い集め、何十箱ものリンゴを山の畑に捨てに行った記憶があります。
途中、リンゴ園で同じ作業をする神沢地区の「オジサン」や「オバサン」達とお互いに「笑顔で」挨拶を交わしつつ・・・。
『いやぁ、えらい(信州弁で「大変な」の意)もんせ。でも、お天道様とケンカしてもしょうがねぇわ。』
ある意味、皆、自分自身に言い聞かせていたのかもしれませんが、私には、悟りにも似て思え「百姓ってスゴイなぁ」と感心せざるを得ませんでした(反面「でも惨めだなぁ」とも感じました。どんなに努力しても自然の前では無力で、一瞬にして水疱に帰し、黙々と片付けをする祖父母や両親の姿を子供の頃から何度となく見てきたことが、「農業は継がない」と自身に決めさせた唯一の理由でもありました)。
農業は自然と共生し太陽の恵みをいただいている以上、人知が及ばぬことがあっても、それも含めての恵みなのだから、という達観なのでしょうか。
恐らく、昨日の伊那谷の農家の方々も同じ気持ちなのでしょう。自分も父に代わって果樹栽培をするようになってからは、何となくそうしたお百姓さんたちの気持ちが少しは理解できるようになりました。悲しくともある意味逞しき百姓の性(さが)でしょうか。
「そうせ、お天道様とケンカしてもしょうがねぇずら!また、お天道様のお陰でいいこともあるずらで。」(*以上、本日は信州弁にて失礼致しました)