カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
チロルを、月一回のお風呂掃除に合わせて洗ってやります。で、この日曜日が風呂掃除。これが毎回ひと騒動。チロルはシャンプーが大嫌いです。
なかなか学習能力の高いチロルは、その内お風呂と分かると、家内が呼んでもケージから身動きもせず出て来なくなり(外に出ていると逆にケージに逃げ込む始末)、次にはリードを懸けると散歩と勘違いするのでリードを懸けて・・・。それも(私が先に風呂に入ってから)家内がチロルを呼ぶと察するのか効果も無くなり、今では最初からリードを懸けて私が一緒に行くことに。すごすごと諦めの様子・・・。
チロルは、水が嫌いで、シャワーを懸けるとシャンプーが終わるまで、狭い洗い場の中をとにかく動き回ります(始まるまではタイルの上にじっとしているのですが)。更には洗った後のドライヤーも嫌いなので、今では洗い場の中で、バスタオルでしっかり拭いて、後は止む無く自然乾燥。晴れた暖かい日は、車大好きチロルのために、自然のドライヤーで乾くように軽トラの荷台に載せてドライブへ。冬は寒いので、薪ストーブで暖めて・・・。
この日曜日は午後からの雨模様だったので、残念ながらチロルにとってシャンプー後の唯一の楽しみでもあるドライブも出来ず、恨めしそうにサッシの窓越しに外を眺めていました。
大騒ぎの30分間。こちらもヘトヘトになりますが、チロルにとっても毎月一回の受難の日、“地獄の30分間”です。
でも、綺麗になったよ、チロル!(って、迷惑そうな顔してますが・・・)
信州は山菜シーズンです。この時期、会社近くの行きつけの小料理屋に行くと、旬の山菜を出してくれます。
定番のワラビやタラの芽(注記)やコシアブラ以外にも、コゴミや行者ニンニクなど。コゴミは茹でてマヨネーズで食べるのが、シンプルですが最高に美味。
昨年の今頃も、山形県の酒田からの出張者をそこへ連れて行きました。何しろ酒田は港町(いつ行っても魚介類の美味しさには感動モノ)ですから、こんな山国で魚を食べても失礼なので、この時期信州ならではの山の幸を、という次第。魚が豊富な地域の人たちは、わざわざ山菜など食べる習慣も無いので、彼も殆どが「初めて食べる」とのことでしたが、美味しいと喜んでくれました。
ただそんな庄内地方の人たちも、目の色を変えて山に採りに行くのが「ネマガリダケ」(注記その2)だそうです。毎年シーズンになると、月山などに「ネマガリダケ採り」に行って遭難する人も出るのだとか・・・。因みに、地元では「月山筍(ガッサンダケ)」と呼ぶそうです。
週末、近くのスーパーに食料品の買出しに行くと(=行かされると。メモ片手に買い物をされているご同輩方を時折見かけますが、皆さんお互いご苦労様!です)、何と「ネマガリダケ」が売られていました。「青森産」という表記があり、「へ~っ!遠く青森から信州まで来たんだ!」と感動し、勿論買い物リスト中にはありませんでしたが、思わず買ってしまいました(ま、この辺がオトコの買い物!と反省)。
早速、夕食時、オーブンで焦げ目が付く程度に焼き、包丁で縦に切り目だけ入れて皮を剥いてアツアツに味噌をつけて、とシンプルに。
そのシャキシャキとした歯ざわりと一緒に独特の甘みと山菜らしいほのかな「苦味」もあって、とても美味しくて家族にも好評でした。
【注記】
タラの芽は、挿し木でも簡単に増やすことが出来ます。ご近所でも庭に植えてあるお宅を見かけます。以前、我家でも父がリンゴ園の隅に植えていましたが、やはり山のモノと比べ苦味が無く「美味しくない」ということで、結局数年後には切ってしまいました。タラの芽も「やはり野におけ・・・」です。
【注記その2】
ネマガリダケ(地方によっては姫竹とも)は竹ではなく「チシマザサ」という高山性の笹の一種(従って筍ではなく、言わば“笹ノコ”)で、主として本州では鳥取以北の日本海沿いの山中と、北海道からその名の通り千島列島に亘って生えているのだそうです。信州でも、新潟県境に近い南小谷や北信地方などの山中には生えている由。
ネマガリダケではありませんが、以前娘の高校の校長先生(長野市のご出身)が、PTA役員の会合の時に、教員住宅に生えた筍を採ってきて(事務の方にお願いして調理して)出していただいたのが、鮭缶(水煮)と一緒に煮た筍の味噌汁。北信地方では、同様にネマガリダケも鮭缶(あるいは鯖缶)と一緒に味噌で煮る(味噌汁仕立てにする)のが一般的なのだそうです。
リフォームする前の花壇でハーブを育てていました。決して華やかではありませんが、清楚な花を咲かせるセージやカモミール、ラベンダーなどと一緒に、食用(&香辛料)を目的に、バジル、チャイブ、オレガノ、タイムやクレソンと、そしてミント類(アップル・ミントとペパー・ミント。優雅にハーブティーなんぞを、と思ったのですが、一度試した結果、家族全員興味なし!)。
最初の一・二年目はそれなりに上手くいって、バジルやクレソンなど何度も食卓を楽しませてくれましたが、それ以降はミントの繁殖力の凄さに、次第に他は駆逐されていき、5年もするとすっかり「ミント畑」になってしまいました。後で知ったのは、ミントは地下茎でどんどん拡がっていくので、竹のように土中に「仕切り」を設けないといけないとのこと。後の祭りでした。
改修後の今回も、我家の庭の一角に(タタミ一畳分ほどのホンの小さなスペースですが)食用ハーブガーデンのスペースを確保しました。自宅で栽培する(食用)ハーブは、大量栽培の市販のものより味が濃いように感じますし、多少虫が食べても気にしなければ、植えっ放しで(水遣りだけで)全く手が掛かりません(ハーブは元々ヨーロッパの野草/雑草?なのでかなり丈夫です)。
バジルやルッコラ(ロケットサラダ)、双方とも都度伸びてきた花芽を摘むのが長く葉を利用するコツ。ルッコラの葉はゴマの味がします。また、ネギの仲間のチャイブは、ピンクの花(注記)も可愛いですし、切らした時のアサツキの代用(和名はその名も「セイヨウアサツキ」とか)になります。パセリ。味は同じですが、セロリのような葉のイタリアン・パセリはサラダの付け合せに。一方スープ等に刻んで使うには、普通のパセリの方が刻み易くお薦めです。クレソン(通常のクレソン=ウォーター・クレスと異なり、アメリカン・クレスなら水辺でなくとも栽培可能)は、サラダや、肉料理などの付け合せは勿論、増えすぎた時は意外と「おひたし」が美味でした。ルッコラやクレソンなどサラダ(パセリも刻んだりして付け合せに)として生で、その日の分だけ摘んできて食べると新鮮で最高です。ただ、一時のブームが去ったのか、苗の種類が昔に比べてかなり減ってしまいました(クレソンなどは最近見当たらず)。
昨年植えた中では、イタリアン・パセリとチャイブ、そしてコモン・タイム(嘗て植えたセイジやローズマリー、オレガノ同様余り出番はありませんが)は多年草なので、今年も活用(二年目のパセリは花芽に注意)できます(そう言えばS&Gの「スカボロー・フェア/詠唱」の歌詞にある一節を思い出しますね)。
今年も五月に家庭菜園用の野菜苗と一緒に一年草の食用ハーブの苗(結局バジルとルッコラしか見当たらず)を買ってきて植えました(また花壇の補植の際、「サラダバーネット」が入荷したので、と一鉢持ってきてくれました。和名「オランダワレモコウ」とか。小さな葉ですがキュウリの味がするそうです)。成長したら、サラダやバジル・スパなどで楽しみたいと思います。
写真の中央でピンク色をしているのがチャイブで、手前にルッコラ。
さて、先週末で、4月末から続いたリンゴの摘果作業もひと段落したので、今度の休みにでも池田町のハーブセンターへ食用ハーブを探しに行ってみようかと思います(ついでにまた安曇野・翁でも・・・?)。
【注記】
チャイブはネギの仲間(ユリ科ネギ属)なので、要するにネギ坊主。食用の長ネギなどの白いネギ坊主(大きなモノは野球のボール大にも)と違い、親指大ほどの小さなピンク色をした可愛らしいネギ坊主が咲きます。
【追記】
西洋タンポポって、ヨーロッパでは古くからの食用ハーブだってご存知ですか?
作庭に際して熟読したある女性ハーブ研究家(注記)の方の記述に寄れば、早春のパリの青空市場に大量に積まれ、パリっ子にとっては待ち望んだ「春告げ」野菜?なのだそうです(生のままサラダで食べて、毎日どんより曇った暗い冬が去って明るい春が来たことを実感するのだとか)。
我家のリンゴ園にもいくらでもあるので、以前、本に記載されていたお薦めレシピ(確か、生の葉を固ゆで卵の黄身をほぐしたものと絡ませ、細かく切ったベーコンをオリーブオイルでカリカリになるまで炒めてタンポポの葉にかけるだけ。)に沿って試してみましたが、以降、家族からのリクエスト無し・・・。
上述の女性ハーブ研究家の方が、昔(日本でハーブがブームになる遥か前)「食用タンポポ」を海外から取り寄せて植えて楽しみにしていたら、春生えてきたのは“そんじょそこら”のどこにでもある普通の西洋タンポポだったのだそうです。タンポポは仏語でピサンリ。英語ではダンディリオン(dandelion)。そのノコギリのような葉から「ライオンの歯」を意味する仏語に由来とか・・・。
【注記】
広田セイ子女史(セイは偏が「青」の旧字体に右側の「つくり」が「見」)。わが国のハーブ研究のパイオニアだそうです。
(84年初版)文庫版(92年講談社刊)の『香りの花束・・・ハーブと暮らし』から引用。この本は、カラー写真入りのハーブのリスト、栽培方法やレシピなどもあってハーブガーデン作庭の際に大変重宝しました。
新緑が眩しい季節です。
『目に青葉 山不如帰 初鰹』(素堂:注記)
先週の土曜日(25日)、朝チロルの散歩をしていると、ホトトギスならぬ「カッコウ」の鳴く声がコダマして響いていました。今年のカッコウの「初鳴き」です。我家周辺では余りホトトギスの鳴くのを聞きませんが(元来聞き分けにくいとされていますが)、この時期山里ではカッコウの鳴く声を良く耳にします。従って、個人的には、この青葉の時期に印象的な鳥の鳴声はホトトギスではなく、カッコウの声。若緑の里山に溶け込んで、何となく、すがすがしさを感じます(注記その2)。
先日、会社の先輩と話をしていたら、その方の地区(旧奈川村、現松本市で野麦峠の麓)では、昔から遅霜を避けるため「カッコウが鳴き始めてから野菜苗を植えろ」と言い伝えられているのだとか。やはりこの時期山里で特徴的な鳥なのでしょう。
ベートーベンの第6番「田園」にもカッコウの鳴声が登場します。ヨーロッパでも田園の心象としてはカッコウが似合っているのでしょうか?
因みに鳩時計って、時報を知らせる鳴声は「鳩」ならぬ「カッコウ」ですよね。
【注記】
山口素堂は江戸時代前期の俳人で、山梨県は南アルプスの天然水で有名な白州町(現北杜市)の出身。元句は本来「目には青葉」で字余りの句であったのが、一般には「目に青葉」で広まったのだそうです。
【注記その2】
“閑古鳥が鳴く”とはカッコウのことだとか。他の鳥の巣に卵を産み付ける「托卵」からカッコウは余り良い印象を持たれていないがためか、それとも人のいない山里に響き渡る声が印象的なためか・・・?
15年に亘り日経新聞に連載中の小泉武夫教授(この春で東農大は定年退官された由。日経のコラムもいつの間にか「発酵学者・文筆家」との記載になっていました)の名物コラム『食あれば楽あり』。
独特の擬音語や擬態語を駆使し、読むだけでヨダレが出てきそうな表現に毎回脱帽し、既に文庫本も4冊読破。例え、どんな簡単なメニュー(例えばお茶漬け)でも、普通の食材を使ってとことん拘る簡単意外なレシピ(食べるだけでなく、ご自身で“食魔殿”と名付けられた自宅厨房で調理)とその胃丈夫さにほとほと感心します。
で、一日雨模様だった先週の日曜日。奥様が、摘花作業で今まで忙しくて行けなかった美容院に夕刻からの予約が取れたとのことで、食料買出しの際、惣菜(何となくトンカツが食べたかったのですが、惣菜コーナーに無く止む無く串カツに)とお刺身を買って(調理せず母と)「簡単にすませたら?」という家内のアドバイスでしたが、別棟の母が「(雨で出るのが)面倒くさい」とのたまうので半分を届け、止む無く独りで食することに。以下、オトコの料理ゆえ、女性の方はご遠慮ください。
そこで、そのまま食べるのもチト芸が無いので、小泉センセに負けず、串カツを使い「ソースカツ丼」(因みに信州伊那谷が発祥?というB級グルメ。但し異説あり)風にアレンジしてみることにしました。
先ずキャベツを千切りにして熱いご飯の上に敷き詰めてソース(中濃が好適)を少しかけ、その上にオーブンで暖め直した串カツを、竹串を抜いて並べて再びたっぷりとソースをまぶして出来上がり。ソースをかけていたら、何となく急に味噌汁が飲みたくなり、煮干から煮出すのも面倒(家内は化学調味料嫌いで、常に煮干からだしを採るため「だし入り」ではなく無添加の味噌)なので、独りゆえ不精ながら、ただ味噌を溶いて家内が作ってあったホウレンソウのおひたしを浮かべて・・・。ツマミのお刺身とで、はいビール、ビール!と。
超簡単ですが、串カツのネギが甘くてソースと絡まって美味しくいただきました。多分、こういうガサツ?な料理は、オトコ独りでないと食べられないかしれません、ね。
そうだ、松本一本ネギのフライ/串揚げも意外とイケルかも!?(第64話『松本の老舗「しづか」と松本一本ネギ』をご参照ください)
そう言えば、昭和30年代の私の子供の頃、毎日田舎料理ばかり(この年になると、祖母の作ってくれたキンピラとか、うの花や煮物などが却って懐かく感じられますが)の中で、ソースが洋食の代名詞のようで何となく「ハイカラ」な気分(例えば目玉焼きも断然ソース派)がしたものですが、そんな古き昔を思い出させるような懐かしい味でした。
【追記】
先週の日経新聞の「食あれば楽あり」で山菜が取り上げられていた中で、小泉センセの記述に「アサツキ(浅葱)」とあるのは、一般に(古来古事記や万葉集にも)言う「野蒜(ノビル)」ではないでしょうか?春の山野草の代表格です。因みに、松本の我が家周辺(お年寄り達)では「ネンボロ」と呼んでいます。
第69話でご紹介させていただいた、舞姫『翠露』。
上諏訪の割烹で飲んだ「辛口」の純米酒の銘柄が分からず(「秋あがり」は季節限定商品のようですし、味わいも少々違うように感じましたので)、舞姫酒造さんに直接メールで伺ったところ、(当方が勝手に)ブログで紹介させていただいたことへのお礼のお言葉と共に、『翠露』のリストも一緒に返信いただき、割烹名から『翠露 純米吟醸中取り生酒 美山錦』と教えていただきました。因みに、リストからこのお酒は「精米歩合 49%、日本酒度 +1度、酸度 1.1」で、720ml 1400円、1.8l 2800円(消費税別)とのことでした(う~ん、知ってはいたものの本当に日本酒度だけでは甘辛は計れないですね)。
お名前から察するに、多分社長ご自身でメールをお送りいただいたように思います。深謝。
良いお酒を安く飲めるのは、消費者としてこんな有難いことはありませんが、それにしても純米吟醸(注記)で、4合瓶が1400円なんて安すぎませんか?
『夏子の酒』にも出てくる「ちょっとイイ」言葉、『和醸良酒』。TVCMを流すようなナショナルブランドの大手ではない、小さくとも気品に溢れた良酒を醸す蔵が日本全国に沢山あります。しかし、年々廃業し減り続けているのが現実です。ある意味、蔵はその土地土地の誇るべき貴重な文化財でもあり、そこで醸される酒はその土地の文化そのものではないでしょうか。大切に残したいものです。
そのためにもせっせと飲まねば・・・!?(家内から「飲まなくていい!」と怒られそうですが、これは言わば文化財保護活動ですから・・・!!)
なお、折角リストもいただいたので(場違いではありますが)ここに転記・掲載しておきます(もし転記ミスがありましたらご容赦ください)。
皆さま、舞姫の『翠露』を是非飲んでみてください。真面目ないいお酒!です。
【注記】
一般的に、精米歩合60%以下が吟醸、50%以下は大吟醸の分類とされますから、精米歩合49%である『翠露 純米吟醸中取り生酒 美山錦』は本来大吟醸と名乗っても良い筈です。下記リストには幾つか吟醸で49%のものがありますし、吟醸としていない純米も精米歩合は55%と吟醸並です。
【参考:『翠露』商品一覧】
1.年間商品
*商品名 原料米 精米歩合 日本酒度 酸度 小売価格(720/1.8消費税抜き)の順
・純米吟醸中取り生酒 雄町(15.3度) 備前雄町49% ±0 1 1600/3200
・純米吟醸中取り生酒 美山錦(15.3度)美山錦 49% +1 1.1 1400/2800
・純米酒からくち火入れ(15.3度) 山田錦 55% +7 1.4 1300/2500
・純米酒 生詰め(16.5度) 美山錦 65% +3 1.6 1200/2300
2.季節・数量限定商品
・大吟醸中取り生原酒(17.2度) 山田錦 39% +5 1.3 3800/7500
・純米吟醸直汲みしぼりたて生原酒(16.0度)美山錦49%+1 1.3 1550/3100
・吟醸あらごし活性にごり酒(18/19度)
しらかば錦/ひとごこち 59% +1 1.3 1250/2500
*からくち純米酒うすにごり「花の雪」(15.3度)山田錦55% +7 1.5 1350/2600
・吟醸うすにごり「雲の峰」(14.5度) 山田錦 55% +6 1.3 1350/2600
・純米酒 からくち秋あがり(15.3度) 山田錦 55% +7 1.5 1350/2600
*純米酒 無濾過生原酒(17.2度) 山田錦 55% +1 1.3 1450/2800
*印は本年度発売予定は無いとのこと。雲の峰は4月20日発売済み、秋あがりは9月発売開始だそうです。また直汲みしぼりたて・あらごしにごり酒は完売とのこと。
ご存知の方も多いと思いますが、新宿駅東口(中央?)改札から徒歩15秒(が謳い文句)のマイシティ地下一階地下鉄への下り階段手前のビア&カフェ『BERG』。坪八ならぬ僅か10坪足らずの小さな店。
コーヒー豆に始まり、エスプレッソ・マシン、パン、ソーセージ(食材は卵に至るまで)、またビールにしてもかなりの拘りが伺えます。因みに、ブレンド210円、モーニングセット399円(マクドより安い!)から、生ビールは315円から、と庶民の味方!
この4月から首都圏の駅は全面禁煙とのことですが、ここは喫煙コーナーもあり、あずさの乗車前に時間があると、喫煙の立ち席で気楽にタバコも吸えることから、昔から出張時にはちょくちょく利用しています(因みに新宿駅はあずさのホームだけは喫煙ボックスあり)。
昨年、家主(ビル・オーナー)から立ち退き要求があり、その交渉での孤軍奮闘振りや常連さんたちの応援(署名活動)などがマスコミにも取り上げられた話題の店。
いつ行っても感心するのは、店の方針が浸透していて、お客さんたちのマナーの良いこと(また驚くのは、夕刻一人でビールやワインを颯爽と愛飲する若い女性客の多いこと)。混んでいれば場所を譲り合い、移動中のひと時のリフレッシュを済ませると、皆さん、さっと立ち去っていきます。
都会のオアシスなどと言うと大袈裟ですが、私のような喫煙派にとっても、また都会人のみならず、あずさで上京する我々信州人にとっても、新宿駅の憩いの場であり、どうか無くならず(立ち退かず)にいつまでもこの場所で続けて欲しい、そんな小さくも個性と自己主張(そして、プラス見知らぬ客同士の連帯感にも似た暖かさ?)がぎゅっと詰まった、そんなお店です。
6日、ゴールデンウィーク最終日です。松本も、昨晩から一日雨。
今日は、リンゴの(一輪)摘花作業も一休みです。この連休はずっと天気も良く、子供達も連休中帰省してきてくれて、また妹夫婦も昨日手伝いに来てくれました。お陰で半分近くまで終了しました(この後、花が終わり実が大きくなっていくと、摘花から摘果作業へと進んでいきます)。
今年は、残念ながら4月の28・29日に松本平では遅霜があり、霜害がリンゴ、桃、ブドウなどに出ているようで、我家の果樹園でも少し被害が見られます。
リンゴは、通常5から6個の花をつけた中で、一番真ん中の花(中心花)が形状の良いリンゴに成長することから、中心を一輪だけ残して、まわりの花は全て摘み取っていきます。霜で中心花がやられた場合は、中心花を諦めて、影響のない残りの花を残します。
昨年は、実をならせ過ぎたこともあり、そういう意味では霜で多少実が減った方が結果良いかもしれないと、楽天的に考えることに。そう言えば、昔、父が、台風とかが来ても「お天道様とケンカをしてもしょうがないさ!」と自然をあるがまま受け入れて泰然としていたことを思い出します。農作物はお天道様次第。『オヤジ、そうだよな!お天道様とケンカしてもしようがない。』今日は雨で一休み。これも天の恵みです。
次女は明日からの授業のため、今朝東京へ戻っていきました。みんな頑張れ!
連休中、摘花作業で時間が無くて出来なかったのですが、今日の雨のお陰で久しぶりにブログを更新できました。
信州ゆかりの詩人尾崎喜八(出身は東京)の詩集『高原詩抄』(昭和17年刊行)の中に、第6編「松本の春の朝」という詩を見つけました。
昭和17年ですので、今から70年近くも前の詩であり、街の佇まいや行き交う人々の様子はすっかり変わってしまっても、「春の松本」の印象は今とさほど変わっていないように思えましたので紹介させていただきます(漢字や仮名遣いは現代風に改めました)。
因みに尾崎喜八は「美ヶ原」を詠んだ詩が有名で、「美しの塔」にその詩が刻まれており、その名作といわれる詩、「美ガ原溶岩台地」も同じ詩集『高原詩抄』(第47編)に収められています。
きっと、この「松本の春の朝」も「入山辺(イリヤマベ)行きのバス」とあることから、彼が愛した美ヶ原へ登るために(登山口の三城牧場まで)出発する朝の松本駅前(私の子供の頃は、古びた駅舎横にバスターミナルがありました)の様子なのでしょう。「れんげそうの咲く」とありますので、代掻きの田起こしの前、4月下旬から5月上旬のちょうど今頃。松本の春の様子が見事に切り取られています。
「松本の春の朝」 尾崎喜八作 『高原詩抄』より 第6編(昭和17年刊行)
車庫の前にずらりならんだ朝のバス、
だが入山辺行きの一番はまだ出ない。
若い女車掌が車内を掃いたり、
そうかと思えば運転手が、
広場で新聞を立読みしながら、
体操のような事をやってみたり。
夜明けに一雨あったらしく、
空気は気持ちよく湿っている。
山にかこまれた静かな町と清らかな田園、
岩燕が囀(さえず)り、れんげそうの咲く朝を、
そこらじゅうから春まだ寒い雪の尖峰が顔を出す。
日本のグリンデンヴァルト、信州松本。
凛とした美しい女車掌が運転台の錫(すず)の筒へ、
紫と珊瑚いろ、
きりたてのヒヤシンスを活けて去る。
注記:グリンデンワルトは、スイスの、北壁で有名なアイガーの麓の街。
因みに松本市(元々は合併した旧安曇村)も姉妹都市の一つ。
写真は朝ならぬ夕刻の松本駅から見た夕映えに染まる「尖峰」の様子です。
日本のグリンデンワルトかは、地元の人間として面映い気がしますが、一方で “そこら中から雪の尖峰が顔を出す”と言うのは、四方を山に囲まれた松本を言い得て妙に思います。