カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 第34話でも触れた、海堂尊。現役の医師にして今やベストセラー作家。デビュー作である『チーム・バチスタの栄光』で、2005年「このミステリーがすごい大賞」受賞後、次々と「医療ミステリー?」小説を発表。同じ“田口・白鳥コンビ”では、『ナイチンゲールの沈黙』、『ジェネラル・ルージュの凱旋』、最新作『イノセント・ゲリラの祝祭』まで。番外編?で、『螺鈿迷宮』。
 「チーム・バチスタ」での興奮?により、「イノセント」を除き、全て読破。
中でも「ジェネラル・ルージュ」は秀逸でした。どちらかというと、ミステリー(≒本来の「Who done it?」としての推理小説)の枠から飛び出して、むしろ社会派?に変身してきていますが、「現代医療の問題点」云々と大上段に構えずとも、後半部の緊迫感溢れるストーリー展開は、それこそ手に汗握ると言っても誇張に非ず、と断言できます。しかも今回の主人公ジェネラル・ルージュこと救命救急センター部長の速水医師が何ともかっこいい。映画化にあたり、2作目に選ばれたのも当然な気がします。
 驚くべきは、「ナイチンゲール」と「ジェネラル・ルージュ」が同時並行してストーリーが進行(ストーリーそのものは別立てですが、同じ病院内で同時に起こっていて、しかも登場人物が双方にクロスオーヴァー)していること。読み手は、同時並行で何冊も一緒に読むこともありますが、2作?が時間的に同時進行していくという設定(その旨の指摘は作中どこにも無く、両方読むと分かるのですが)は冒頭から意表をつかれた感じで「やられた!」と脱帽した次第。(注記:「ジェネラル・ルージュ」の解説には指摘がありました)その意味で、「ナイチンゲール」から先に読んだ方がいいでしょう。あるいは、同時に読むか・・・?

 良く?水戸黄門と浅見光彦シリーズの共通性が指摘されますが、個人的には、海堂作品にもある種それに似た(「それ」以上のストーリー展開の面白さに加え、最後にはという)期待感(上述作品のようなワンパターン化した安心感までは、幸いまだマンネリ化していない)と、登場人物自身の一人漫才的なボケと突っ込みの明るいスピード感があり、それがまた別の魅力にもなっています。それは、田口・白鳥コンビに限らず、脇役の猫田師長(普段の眠りネコが、後半部の修羅場を前にして浮き足立つ部下を一喝して落ち着かせる啖呵のかっこ良さ)や姫宮補佐官(因みに彼女は螺鈿迷宮でも大活躍?するのですが、この後その舞台へ異動するくだりがさり気無く挿入されています)も同様です。

 さて今回、映画はどこまで原作に迫れたか?

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