みなさん、こんにちは!
長野県塩尻市の鴨居歯科医院
鴨居インプラント審美サロン
歯科医師の岡本 文です。
みなさん、日本で最古の入れ歯(義歯)っていつのものだと思いますか?
日本最古といわれる木彫りの義歯は和歌山県にある願成寺に残されています。作ったのは1538年に没した尼僧の「中岡テイ」さんです。遺髪・手鏡・扇子・硯箱などの身の回りの遺品と一緒に上あごの総義歯が収められていました。
この総義歯は、極めて精巧に作られており、外観上は現在の技術で作られたものと比較しても遜色のない出来栄えです。
材料に使われたツゲの木は、彫刻しやすく下触りも良いので、義歯に適しています。24時間煮て、水中に保存したものを彫刻したと推測されています。
当時は義歯の前歯部分に人間の抜去した歯や動物の骨、象牙などが使われていました。そうした歯や骨を加工し、ツゲの木で作った本体部分と三味線の糸で連結し、固定していたようです。
型どりは、蜜蝋や松ヤニ・白蝋などを混ぜたもので蝋型をとり、ツゲの木で作った本体を合わせながら、徐々に彫刻したと推測されます。
細かい修正は口の中で食紅を使って、当たる箇所を痛くならないように削っていたのでしょう。製作過程もほぼ現在の手法と同じです。
西洋では中世に義歯が作られましたが、スプリング(ばね)を使ったもので、主に審美回復を目的とした見た目専用のものだったため、実用的ではありませんでした。
ところが、日本で作られていたツゲの義歯は、重力に反して義歯が落ちないように、上顎義歯と口腔粘膜が吸着する理論が応用されていたようです。
これは現在の義歯と同様の仕組みです。
願成寺の義歯は奥歯にすり減った跡がみられ、実際に使用していたことをうかがわせます。
今から500年近くも前に、日本には現代に通じる入れ歯の技術があったのですね。驚きです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。