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今日は、朝日新聞の記事からです。
~「芸術の危機」問いかける サド発禁50年、裁判録復刊~
仏文学者の渋沢龍彦が翻訳した仏作家・思想家マルキ・ド・サド(1740~1814)の小説『悪徳の栄え 続』が発禁処分となって、今年は50年にあたる。これを機に、出版元の現代思潮新社が裁判記録を復刊した。当時に比べ、わいせつへの視線が緩やかになったかにみえる現代。かつての「禁書」をめぐる裁判は、そこにどのような意味を投げかけるのか。

行政書士試験を勉強した方は、この「悪徳の栄え事件」は、必ず一度はあたっている憲法判例だと思います。
”表現の自由”を勉強する際に、「四畳半襖の下張事件」や、「チャタレイ夫人の恋人事件」などとともに目を通したはずです。

今回、復刊となったのは、現代思潮新社の「サド裁判上・下」。

判決は、「芸術的・思想的価値のある文書であることによって、文書内容の猥褻性を現象・緩和させることになっても、猥褻文書であることには違いは無い。」として、出版社社長の石井恭二氏と翻訳者の澁澤龍彦氏に罰金刑が言渡されました。
そして、「特定の章句を取り出して、その部分のみの猥褻性の有無を判断すべきでは無く、文書全体との関連性において判断すべきである」ともしています。

この裁判自体は、「猥褻か?芸術か?」という二元論に終始した裁判ですが、判決文についた補足意見や反対意見には注目すべき点がありました。

裁判官田中二郎氏は、”相対的わいせつ概念”を持ち出し、「本書はわいせつ文書にはあたらない」としました。
”相対的わいせつ概念”とは、「文書が猥褻物といえるか否かを判断する際には、その文書が作成された意図、そして、販売された態様を深く考慮すべきである」というもので、「読者・視聴者の性欲を満足させるために作成・販売されたものであるかどうか?」によって”わいせつ性”を判断すべきだというものです。
(余談ですが、私は、この「悪徳の栄え」がエロ本の販売機で売られていたら”わいせつ文書”になるのか?というどうでもいいことが頭に浮かんでしまいましたが・・・。)

そして、裁判官色川幸太郎氏は、「憲法21条における表現の自由には、知る権利(知る自由)が包含されている。したがって、読者・視聴者の知る自由を無視した表現の自由は有り得ない。表現の自由を表現者からの視点だけで語らずに、国民の有する幸福追求の権利(憲法13条)からいつてもそうであるが、要するに文芸作品を鑑賞しその価値を享受する自由は、出版、頒布等の自由と共に、十分に尊重されなければならない。」と反対意見を述べました。
まあ、ここで”知る権利”まで持ち出すと、非常にややこしくなるんですが・・・。
でも、注目すべき意見であることは間違いない。

今回復刊された「サド裁判上・下」は、どちらかというと単なる裁判記録という内容でしょうが、これを読むことによって、”表現の自由”や”知る権利”について考えるきっかけになるかもしれません。

参考:
<憲法21条>集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密
①集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
②検閲はこれをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
<憲法13条>個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
<刑法175条>わいせつ物頒布等
わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。



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