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遅くなりました。特上カバチの第3話に出てきた馴染みのない法律用語のお話をしましょう。
先日の放送の主題は、パワハラに関する労働者と雇用者のトラブルでしたが、その中には、解説したほうがよさそうな言葉は出てきませんでした。

そこで、今回は番組の冒頭に出てきた”不法原因給付”について少しお話します。

田村が住むアパートの隣人夫婦のご主人が、麻雀の負け分の請求をチンピラ風情の男から受けた時に、「博打の負け分は支払う必要ない」と田村が説明した後、そのチンピラ風情の男が、「じゃあ、俺がこの前支払った負け分を返せ!」と迫った時に、田村が「それは不法原因給付だから返す必要なし!」と言った、あれです。

不法原因給付については、民法708条に記載されています。

<民法708条>
不法の原因の為め給付を為したる者は其給付したるものの返還を請求することを得ず。但し、不法の原因が受益者に付てのみ存したるときは此限に在らず。

つまり、不法な原因のために給付がなされた場合は、その原因自体が公序良俗に反するので無効である。しかも、その給付した物について返還請求することはできない。ということです。(但し書き以降は、ここでは説明を省きます)

「公序良俗」とは、社会の秩序と善良の風俗のことで、要するに社会道徳観というような意味合いの言葉です。
そして、民法90条は、この公序良俗に反する行為を無効であるとしています。(つまり、社会道徳に照らし合わせて、それに反することだと判断できるようなことは無効だってことです)

つまり、あのドラマにおけるチンピラ風情の男は、賭け麻雀の負け分を支払っていますが、賭け麻雀自体が違法行為ですから、そのような行為を原因とする支払だから、返還請求をすることができない。というわけです。

ここで、ひとつだけ疑問が・・・。

不法な原因で給付したのだから返還請求できないということは理解できるけど、じゃあ、不法な原因で受け取った者が、それを返還しなくていいのは何故?

これは一応の解釈論として、その返還請求を認めてしまうと、自ら不法な原因で給付をした者が、後々、その不法性を根拠として裁判所に救済を求めることができることになってしまいます。
すると、「違法行為をした者を裁判所が助ける」という微妙な話になってしまいます。
ですから、「給付を受けた者は返さなくていい」というのは、「給付をした者が返還請求することだけは許さない」という理念の裏返しというわけです。