日本小児神経学会
Q3. インフルエンザ脳症はどうしたら予防できますか?
http://child-neuro-jp.org/visitor/qa2/a3.html
A:インフルエンザで最も重い合併症がインフルエンザ脳症です。死亡率は約30%で、後遺症も約25%の子どもに見られる重篤な疾患です。インフルエンザ脳症は、わが国では毎年100~300人の子どもが発病しています。1歳をピークとして主に6歳以下の乳幼児が発症しやすいという特徴があります。インフルエンザ脳症は、発熱から数時間~1日と神経症状が出るまでの期間が短く、主としてけいれん・意味不明な言動・急速に進行する意識障害が神経症状として見られます。今回は、インフルエンザ脳症に少しでもかからないための予防について述べます。
(1)インフルエンザワクチンについて
インフルエンザワクチンの接種により、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防することが期待されています。わが国では、65歳以上の健常な高齢者については、約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったという報告があります。小児については、1歳~6歳未満の幼児では発病を阻止する効果は約20~30%で、1歳未満の乳児では対象症例数が少なく効果は明らかでなかったという報告がありますが、インフルエンザワクチンは罹患した場合の重症化防止には有効と報告されていますので可能な限り接種をお勧めします。
(2)インフルエンザに対する解熱剤の使用上の注意
発熱はインフルエンザの主な症状のひとつで、ウイルスに対する免疫反応の一部であり、必ずしも解熱させなければならないものではありません。39度以上の発熱があって、元気がなく、ぐったりしているようであれば解熱剤を使用してもよいでしょう。解熱剤の使用の際、アスピリン(商品名:バファリンなど)やメフェナム酸(ポンタールなど)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)はインフルエンザ脳症の誘因や重症化を招くことが明らかになってきましたので、これらの薬は使用しないでください。インフルエンザに使用できる解熱剤はアセトアミノフェン(アンヒバ坐剤、カロナールなど)が主体です。解熱剤の使用で不明な点があればかかりつけ医と御相談ください。
(3)インフルエンザに対する治療薬
インフルエンザに対する治療薬としては、リン酸オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル水和物(リレンザ)、塩酸アマンタジン(シンメトレル)があります。ただし、その効果はインフルエンザの症状が出はじめてからの時間や病状により異なりますので、使用する・しないは医師の判断になります。上述の抗インフルエンザウイルス薬を適切な時期(発症から48時間以内)から服用を開始すると、発熱期間は通常1~2日間短縮され、ウイルス排泄量も減少します。リン酸オセルタミビル(タミフル)服用後の異常行動等による小児死亡例の報告がされていますが、現在のところ薬剤との因果関係を示す証拠はないと報告されています。
(国立精神・神経センター武蔵病院 小児神経科 中川栄二 12月12日)
インフルエンザ脳症ガイドライン改訂版 平成 21 年 9 月
厚生労働省 インフルエンザ脳症研究班
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/09/dl/info0925-01.pdf