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2015/08/31 17:07 | 印刷

ノロウイルスが変異 免疫持たず大流行のおそれ
NHK Web8月28日 19時39分


ノロウイルスが変異 免疫持たず大流行のおそれ
高齢者や乳幼児を中心に激しいおう吐や下痢を引き起こすノロウイルスが変異し、ヒトが免疫を持たない新たなウイルスとなって、ことし初めから国内で感染を広げていたことが分かりました。ノロウイルスの本格的な流行は秋以降で、国立感染症研究所は、秋以降も新たなウイルスが主流となった場合には、例年にない大きな流行になるおそれがあるとして、全国の地方衛生研究所にウイルスの分析を徹底するよう求めました。
これは、川崎市健康安全研究所と国立感染症研究所などのグループが行った調査で分かったものです。
激しいおう吐や下痢を引き起こすノロウイルスには、ヒトに感染する遺伝子の型が31種類ありますが、遺伝子型の判別が可能になった平成16年以降、国内でも海外でも「G※2・4」という型が流行の主流を占めてきました。
ところが、研究グループが去年10月からの半年間、国内の患者から検出されたウイルス2000株以上を調べたところ、ことしに入って、「G※2・17」という型が急激に増え、2月以降は、すべてこの型になっていました。
さらにこの「G※2・17」の遺伝子を詳しく解析したところ、ヒトへの感染のしやすさに関わる部分が変異し、ヒトが免疫を持っていない新たなウイルスになっていたということです。

ウイルスは、変異によって新たなタイプが出てくると、ヒトがそれまでに獲得した免疫が役に立たなくなるため、感染する人が増え大きな流行になるおそれがあります。
患者数の統計が始まった平成11年以降、ノロウイルスを含む「感染性胃腸炎」が最も大きな流行になったのは、9年前、平成18年です。このときは、これまで流行してきた「G※2・4」型のノロウイルスの遺伝子が変異し、ヒトが免疫を持たない新たなウイルスとして感染を広げました。
そして、例年より1か月早い10月ごろから患者が急速に増えはじめ、全国およそ3000の小児科の医療機関から報告される「感染性胃腸炎」の患者は、10月からの3か月間の累積で1医療機関当たり166.8人と、前の年の同じ時期の1.6倍に上りました。
国立感染症研究所は、9月から12月上旬までの3か月余りで、子どもを中心に患者は303万9000人に上ったと推計しています。
また、当時のNHKの調査では、10月から12月までに少なくとも2405件に上る集団発生が起きていました。このうち東京・池袋のホテルでは利用客など400人を超える集団感染が発生。客がじゅうたんの上に吐いたおう吐物から感染が広がったとみられています。
また、集団発生が起きた場所は、高齢者施設が半数以上を占め、次いで医療機関、保育所・幼稚園と、抵抗力の弱い人たちが集まる施設での集団発生が相次いでいました。
国立感染症研究所は、ことしの秋以降、新たな「G※2・17」型が流行の主流を占めた場合、平成18年の時のような大流行になるおそれがあるとして、ウイルスの検出を行う全国の地方衛生研究所に遺伝子の分析を徹底し、注意喚起につなげるよう求めました。
国立感染症研究所の片山和彦室長は「新たなウイルスが秋以降も流行の主流になった場合には、平成18年のときと同じような大流行につながりかねない。どの程度検出されるか監視し、警戒する必要がある」と指摘しています。

※ウイルスの型の「2」はローマ数字
非常に強い感染力
ノロウイルスは、おう吐や下痢などの胃腸炎を起こすウイルスで、食中毒の原因にもなり、毎年秋から冬にかけて本格的な流行を繰り返します。
ワクチンや特別な薬はないため、治療は、おう吐や下痢によって脱水症状を起こさないよう水分を補給する対症療法が中心となります。
通常は数日間で自然に回復しますが、乳幼児や高齢者の場合、脱水症状を起こし、入院による点滴などが必要になったり、吐いたものをのどに詰まらせ窒息で死亡したりすることもあり注意が必要です。
また、ノロウイルスは感染力が非常に強いのが特徴で、100個程度あると感染し、腸の中で増殖して症状を引き起こします。
患者のおう吐物や便などウイルスで汚染された物に触った手などを介して口から感染するため、抵抗力の落ちた高齢者が多い施設や病院、それに保育園や幼稚園では集団感染に注意が必要です。
ノロウイルスは、アルコールによる消毒では十分な効果がないため、患者のおう吐物や便を処理する時には、マスクや手袋をして次亜塩素酸ナトリウムを含む市販の漂白剤などを使って消毒する必要があります。
また、症状が出ない人もいるため、飲食店などで食中毒を防ぐには、調理や配膳の際に流水と石けんによる手洗いを徹底したり使い捨ての手袋を使ったりすることなどが重要です。

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