予防接種は本当に効果があるか
http://president.jp/articles/-/13591
2014年9月、千葉県君津市、島根県出雲市、東京都日野市、岐阜県美濃加茂市の小中高校で、早くもインフルエンザの集団感染による学級閉鎖が相次いだ。
インフルエンザの流行は例年12月から翌年3月くらいまでだが、予防注射を受けるか、打つとしたらいつがいいのか悩ましい。身近にも、予防注射を打ったにも関わらずインフルエンザにかかった例がある。インフルエンザワクチンは本当に効果があるのだろうか。
実は、インフルエンザの予防注射には、感染を予防する効果はない。感染とは、ウイルスが鼻や口の粘膜から体に入り細胞内で増殖することだ。とはいえ、厚生労働省の研究班の報告によれば、インフルエンザの発症と重症化を抑える効果はあるという。そもそもインフルエンザワクチンは、接種を受けた人の体にウイルスを排除する抗体を作り、同じウイルスが入ってきたときにそれを攻撃して発症や重症化を抑えるものなのだ。
研究班の分析では、65歳以上の高齢者はインフルエンザワクチンの接種によって発症リスクを34~54%、死亡リスクを82%減らせる。また、0~15歳では1回接種で68%、2回接種で85%、16~64歳では1回接種で55%、2回接種で82%の発症予防効果があったとする報告もある。
なぜ発症率、重症化率が下がるのか
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インフルエンザによって乳幼児は脳炎・脳症、65歳以上の人は肺炎になるリスクが高いので、予防接種でできるだけ発症・重症化を抑えられるならそれに越したことはない。肺炎を予防する23価肺炎球菌ワクチンがあるが、インフルエンザワクチンを接種しただけでも肺炎の重症化と死亡率を低下させるとの報告が複数出ている。例えば、65歳以上のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を対象にした研究では、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンと併用したときはもちろん、インフルエンザの予防注射を接種しただけでも、何もしなかったときより入院のリスクを半分以下、死亡リスクは5分の1に抑えられた。
効果の持続期間は5カ月程度
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米国では、乳幼児や高齢者、基礎疾患のある人が家族にいる人、医療関係者などそういった人たちと接する職業の人にもインフルエンザワクチンの接種が推奨されている。
特に持病もなく元気な10代~50代なら、インフルエンザになったとしても1週間くらいで回復する。「それなら予防接種は必要ない」と考えるなら、「受けない」という選択もありだろう。受験生とその家族、仕事が忙しくて1週間も休んでいられない人は、少しでもリスクを減らすために接種を受けたほうが無難かもしれない。
インフルエンザの予防注射は打つべきか? 効果はあるか?
PRESIDENT Online スペシャル 医療ジャーナリスト 福島安紀=文