内科・外科・小児科 安曇野市 穂高ハートクリニックのスタッフブログ

HHCブログ

2012/10/31 10:40

◆マイコプラズマ肺炎(Mycoplasma pneumonia)

 以前には、定型的な細菌性肺炎と違って重症感が少なく、胸部レ線像も異なる故に「異型肺炎」に分類されてきた肺炎群があり、その後、マイコプラズマ肺炎は「異型肺炎」の多くを占めるものであることが解った。近年「異型肺炎」の病名は使われなくなる傾向にある。

疫 学
 旧感染症発生動向調査では「異型肺炎」の発生動向調査が行われていたが、これにはマイコプラズマ肺炎以外にも、クラミジア肺炎やウイルス性肺炎などの疾患が含まれていた。1999年4月施行の感染症法により、マイコプラズマ肺炎として疾患特異的な発生動向調査を行う目的から、病原体診断を含んだ発生動向調査が行われることになった。
本疾患は通常通年性にみられ、普遍的な疾患であると考えられている。欧米において行われた罹患率調査のデータからは、報告によって差はあるものの、一般に年間で感受性人口の5~10%が罹患すると報告されている。本邦での感染症発生動向調査からは、晩秋から早春にかけて報告数が多くなり、罹患年齢は幼児期、学童期、青年期が中心である。病原体分離例でみると7~8歳にピークがある。本邦では従来4 年周期でオリンピックのある年に流行を繰り返してきたが、近年この傾向は崩れつつあり、1984 年と1988年に大きな流行があって以降は大きな全国流行はない。

病原体
 病原体は肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )であるが、これは自己増殖可能な最小の微生物で、生物学的には細菌に分類される。他の細菌と異なり細胞壁を持たないので、多形態性を示し、ペニシリン、セフェムなどの細胞壁合成阻害の抗菌薬には感受性がない。専用のマイコプラズマ培地上にて増殖可能であるが、日数がかかり(2~4 週間)、操作もやや煩雑で、雑菌増殖による検査不能例も発生する。肺炎マイコプラズマは熱に弱く、界面活性剤によっても失活する。
 感染様式は感染患者からの飛沫感染と接触感染によるが、濃厚接触が必要と考えられており、地域での感染拡大の速度は遅い。感染の拡大は通常閉鎖集団などではみられるが、学校などでの短時間での暴露による感染拡大の可能性は高くなく、友人間での濃厚接触によるものが重要とされている。病原体は侵入後、粘膜表面の細胞外で増殖を開始し、上気道、あるいは気管、気管支、細気管支、肺胞などの下気道の粘膜上皮を破壊する。特に気管支、細気管支の繊毛上皮の破壊が顕著で、粘膜の剥離、潰瘍を形成する。気道粘液への病原体の排出は初発症状発現前2~8日でみられるとされ、臨床症状発現時にピークとなり、高いレベルが約1 週間続いたあと、4~6週間以上排出が続く。
 感染により特異抗体が産生されるが、生涯続くものではなく徐々に減衰していくが、その期間は様々であり、再感染もよく見られる。

臨床症状
 潜伏期は通常2~3週間で、初発症状は発熱、全身倦怠、頭痛などである。咳は初発症状出現後3~5日から始まることが多く、当初は乾性の咳であるが、経過に従い咳は徐々に強くなり、解熱後も長く続く(3~4週間)。特に年長児や青年では、後期には湿性の咳となることが多い。鼻炎症状は本疾患では典型的ではないが、幼児ではより頻繁に見られる。嗄声、耳痛、咽頭痛、消化器症状、そして胸痛は約25%で見られ、また、皮疹は報告により差があるが6~17%である。喘息様気管支炎を呈することは比較的多く、急性期には40%で喘鳴が認められ、また、3年後に肺機能を評価したところ、対照に比して有意に低下していたという報告もある。昔から「異型肺炎」として、肺炎にしては元気で一般状態も悪くないことが特徴であるとされてきたが、重症肺炎となることもあり、胸水貯留は珍しいものではない。
 他に合併症としては、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群など多彩なものが含まれる。
 理学的所見では聴診上乾性ラ音が多い。まれに、胸部レ線上異常陰影があっても聴診上異常を認めない症例があり、胸部レ線検査が欠かせない。胸部レ線所見ではびまん性のスリガラス様間質性陰影が特徴とされてきたが、実際には多いものではなく、むしろウイルス性、真菌性、クラミジア性のものに多いと報告されている。マイコプラズマ肺炎確定例では、大葉性肺炎像、肺胞性陰影、間質性陰影、これらの混在など、多様なパターンをとることが知られている。血液検査所見では白血球数は正常もしくは増加し、赤沈は亢進、CRP は中等度以上の陽性を示し、AST 、ALT の上昇を一過性にみとめることも多い。寒冷凝集反応は本疾患のほとんどで陽性に出るが、特異的なものではない。しかしながら、これが高ければマイコプラズマによる可能性が高いとされる。

病原診断
 確定診断には、患者の咽頭拭い液、喀痰よりマイコプラズマを分離することであるが、適切な培地と経験があれば難しいことではない。しかしながら早くても1 週間程度かかるため、通常の診断としては有用ではない。近年迅速診断としてPCR 法が開発されており、臨床的に有用性が高いが、実施可能な施設は限られている。
 臨床の現場では血清診断でなされることが多い。補体結合反応(CF)、間接赤血球凝集反応(IHA)にて、ペア血清で4倍以上の上昇を確認する。単一血清で診断するには、それぞれ64倍以上、320倍以上の抗体価が必要である。近年、粒子凝集法(PA )、蛍光抗体法(IF)あるいは酵素抗体法(ELISA)によるIgM、IgG抗体の検出も可能となっている。

治療・予防
 抗菌薬による化学療法が基本であるが、ペニシリン系やセフェム系などのβ‐ ラクタム剤は効果がなく、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系薬剤が用いられる。一般的には、マクロライド系のエリスロマイシン、クラリスロマイシンなどを第一選択とするが、学童期以降ではテトラサイクリン系のミノサイクリンも使用される。特異的な予防方法はなく、流行期には手洗い、うがいなどの一般的な予防方法の励行と、患者との濃厚な接触を避けることである。

感染症法における取り扱い(2003年11月施行の感染症法改正に伴い更新)
 マイコプラズマ肺炎は5類感染症定点把握疾患に定められており、全国約500カ所の基幹定点から毎週報告がなされている。報告のための基準は以下の通りとなっている。
 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断や血清学的診断がなされたもの
  ・病原体の検出
   例、気道から病原体が検出されたものなど
  ・病原体に対する抗体の検出
   例、血清抗体の有意な上昇
 血清抗体の異常高値(間接血球凝集反応(IHA)抗体価320~640倍以上、または補体結合反応(CF)抗体価64 倍以上)など

学校保健法における取り扱い
 本疾患は、学校において予防すべき伝染病の中には明確に規定されてなく、学校で流行がおこった場合にその流行を防ぐため、必要があれば、学校長が学校医の意見を聞き、第3種学校伝染病としての措置を講じることができる疾患のうち、条件によっては出席停止の措置が必要と考えられる伝染病のひとつとして例示されている。登校登園については、急性期が過ぎて症状が改善し、全身状態の良いものは登校可能となっており、流行阻止の目的というよりも、患者本人の状態によって判断すべきであると考えられる。


【文 献】
1)Cherry JD. Mycoplasma and Ureaplasma infection. In Textbook of pediatric infectious diseases, 4th ed. WB Saunders,1998. pp2259‐2286
2)Anonymous. マイコプラズマ肺炎. 病原微生物検出情報月報19巻2号、1998.

(国立感染症研究所感染症情報センター 谷口清州)



2012/10/31 8:02

ポリオとポリオワクチンの基礎知識 厚生労働省


問12.単独の不活化ポリオワクチンよりも、4種混合ワクチンを受けた方がよいのですか?

3種混合ワクチンの接種を遅らせることは危険です。
乳児が百日ぜきにかかると、重症化し、命に関わることもあります。3種混合ワクチンは、生後3か月を過ぎたらできるだけ早く接種することが望ましいです。
4種混合ワクチンの導入までの間は、単独の不活化ポリオワクチンと、3種混合ワクチン(DPT)を接種してください。
4種混合ワクチンの導入を待つことはせず、単独の不活化ポリオワクチンと3種混合ワクチンを接種していただくようお願いします。


問13.単独の不活化ポリオワクチンを1回受けると、その後に4種混合ワクチンを受けられなくなりますか?

原則として最初に使用した不活化ポリオワクチン(単独又は4種混合)を最後まで使用してください。
国内臨床研究によって併用可能となりましたが、ワクチン需要供給量のバランスが崩れる恐れがあるため、単独の不活化ポリオワクチンを使用している方は、最後まで単独の不活化ポリオワクチンを接種していただくようお願いします。
単独と4種混合の併用は、接種スケジュール上、支障がない場合に限ります。
4種混合ワクチンの初回接種間隔は20日から56日までとなっており、3種混合ワクチンと4種混合ワクチンの初回接種間隔も20日から56日までとなっているため、規定される初回接種間隔内に接種できる場合に限ります。
なお、単独の不活化ポリオワクチンは、初回接種(3回)として20日以上の間隔をおけば接種可能であり、接種間隔の上限はありません。
3種混合ワクチンと4種混合ワクチンを併用する場合においては、初回3回・追加1回の合計4回を超えて接種することはできません。


使用する不活化ポリオワクチンについて
問14.単独の不活化ポリオワクチンと4種混合ワクチン、どちらを接種するのですか?

以下のいずれかのワクチンを既に接種している方:
  生ポリオワクチン1回
  単独の不活化ポリオワクチン1回以上
  3種混合ワクチン1回以上
4種混合ワクチンの導入にかかわらず、原則として3種混合ワクチン+単独の不活化ポリオワクチンを接種します。
2012(平成24)年7月までに生まれるお子様:
生後3ヶ月を迎えたら、3種混合ワクチンと単独の不活化ポリオワクチンの接種を受けてください。4種混合ワクチンの導入を待つことはおすすめできません。
4種混合ワクチン導入後に、3種混合ワクチン未接種かつポリオワクチン未接種の方は、4種混合ワクチンを接種することになります。しかしながら、乳児が百日ぜきにかかると命に関わることもあるため、生後3ヶ月を過ぎたらできるだけ早く3種混合ワクチンを接種することをおすすめします。
2012(平成24)年8月以降に生まれるお子様:
3種混合ワクチン未接種かつポリオワクチン未接種の方は、原則として4種混合ワクチンを接種します。
原則として最初に使用した不活化ポリオワクチン(単独又は4種混合)を最後まで使用してください。
国内臨床研究によって併用可能となりましたが、ワクチン需要供給量のバランスが崩れる恐れがあるため、単独の不活化ポリオワクチンを使用している方は、最後まで単独の不活化ポリオワクチンを接種していただくようお願いします。

プロフィール
医療法人泉会
穂高ハートクリニック
診療科目:内科、外科、小児科
診察内容:
心臓血管病、ワーファリンケア、
生活習慣病、メタボリックシンドローム
(高血圧,高脂血症,糖尿病,高尿酸血症)
特定検診
予防接種

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