2011/07/30 0:46

初のロタワクチン登場へ
 乳幼児の重症胃腸炎予防
  同時接種うまく活用を   2011.07.26 47News


 乳幼児の激しい嘔吐や下痢の原因として最も頻度が高い「ロタウイルス胃腸炎」。重症化すると極度の脱水症状や脳炎などを起こし、命にかかわることもある。その予防を目的とするワクチンが7月、厚生労働省から国内初の承認を受けた。年内に発売され、任意での接種が始まる見通しだ。
 一方、このワクチンを接種する生後6カ月までの時期は、ほかのワクチンも重なって接種スケジュールは過密状態。専門家は「複数のワクチンを組み合わせる同時接種をうまく活用することが大切だ」と指摘する。
 ▽強い感染力
 「世界中のほぼすべての子どもが5歳までにロタウイルスに感染する。乳幼児の入院を必要とする下痢の30~50%はロタウイルスが原因」と、川村尚久・大阪労災病院 小児科部長は解説する。
 川村さんによると、日本では毎年2~5月にロタウイルス胃腸炎が流行し、特に生後6カ月~2歳の発症が多い。感染すると半日から4日の潜伏期間の後、嘔吐や、米のとぎ汁のような白く水っぽい下痢、発熱、腹痛などの症状が現れる。
 多くの患者は1週間程度で回復するが、嘔吐と下痢の繰り返しでひどい脱水症状に陥り重症化することも。けいれんや脳炎・脳症などの合併症が引き起こされ、死亡するケースもある。
 ウイルスは患者の便に大量排出され、周囲に付着。これが手やおもちゃなどを介して子どもの口に入り感染が広がる。感染力は非常に強い。
 「抗ウイルス薬などの有効な薬剤はない。水分やナトリウムなどの電解質を補給する対症療法が中心。それだけにワクチンによる予防が重要になる」と川村さんは話す。
 ▽重症92%予防
 現在、世界で使われているワクチンは2種類あり、いずれも経口生ワクチン。世界保健機関(WHO)が乳児への定期接種化を推奨し、多くの国で導入されている。
 今回、日本で承認されたのはグラクソ・スミスクライン の「ロタリックス」。既に120カ国以上で使用実績がある。
 ロタウイルスには数百種類の型があるが、全世界のロタウイルス胃腸炎の90%以上は特定の5種類の型によって引き起こされている。ロタリックスは、全体の65%を占める「G1P[8]」という型から製造。液状のワクチン1・5ミリリットルを、4週間以上の間隔を置いて2回飲ませる。
 獲得した免疫で類似の病原体にも防御反応を示す「交差免疫」により、G1以外のタイプにも予防効果が期待できるという。国内の臨床試験(治験)では、重症のロタウイルス胃腸炎を92%防ぐ効果が認められた。
 ▽不安払拭を
 ワクチンにはそれぞれ適切な接種時期や接種回数がある。ロタリックスの場合、生後6週以降に初回の接種を行い、生後6カ月(24週)までに2回目の投与を終えなければならない。
 しかし、この期間は3種混合やBCG、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌などのワクチンの接種時期でもある。川村さんは「同時接種をしなければ、スケジュールに組み込むことは難しい」と指摘する。
 最近、同時接種に"逆風"が吹いた。ヒブや小児用肺炎球菌を含む複数のワクチンを同時接種した乳幼児の死亡が相次ぎ、両ワクチンの接種が一時見合わされたのだ。厚労省の検討会が「死亡と接種に明確な因果関係はない。安全上問題ない」と判断し接種が再開されたが、一度生じた不安の払拭は容易ではない。
 薗部友良・日赤医療センター小児科顧問は「同時接種は安全だ。医学的には何種類までという制限もない。子どもたちを守るために活用してほしい」と呼び掛けている。(共同通信 赤坂達也)