ワクチン同時接種:再開可否は次回判断 厚労省検討委
毎日新聞 2011年3月8日 21時57分
ヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンと他のワクチンを同時接種後、乳幼児が死亡する事例が5件報告された事態を受け、厚生労働省は8日、ワクチンの安全性を評価する専門家検討会を開いた。現時点では接種と死亡の直接的な因果関係は認められないが、同時接種の安全性などさらに情報収集が必要だとして、接種再開の可否は次回の会合(概ね2週間後)で判断するという。
検討会では、厚労省が各症例について主治医を含めた複数の医師に評価を依頼し、いずれも「ワクチンと死亡との因果関係が認められるケースはなかった」とする結果が報告された。
委員からは「海外の多くの国で同時接種を実施しているが、死亡率が高いというデータはみられない」との発言があった。別の委員は、ヒブワクチンの単独接種と、ヒブと他のワクチンを同時接種した症例を比較した国内の研究結果でも副作用は増えていないと報告した。
しかし、「現時点では各症例の基礎疾患の重さも分からず、責任を持って判断ができない」などと早急な接種再開に慎重な意見もあり、次回までに2月以降の接種者数や海外の状況などの詳細なデータを集めて判断することにした。心疾患などの基礎疾患がある子どもについては十分な注意が必要との見解では一致した。
ヒブワクチンは08年12月、小児用肺炎球菌ワクチンは10年2月に国内販売が始まり、今年1月末までにそれぞれ155万人(推定)、110万人(同)が接種した。いずれも細菌性髄膜炎などの予防効果があり、子宮頸(けい)がんワクチンと併せ、10年11月~12年3月まで国と市区町村が公費接種を行っている。【佐々木洋】
小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの安全性について
平成23年3月8日
安全対策調査会
子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会
1.報告された5例の症例評価について
平成23年3月2日以降、小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンを含むワクチン同時接種後の乳幼児において5例の死亡例が報告されており、これらについて評価を行った。
(1) 5例は0歳から2歳代の乳幼児で、基礎疾患を有するものが3例、基礎疾患が明確でないものが2例であった。
(2) 接種から死亡までの期間は、翌日死亡が3例、2日後死亡が1例、3日後死亡が1例であった。
(3) 現在得られている各症例の経過や所見に基づいて評価したところ、報告された5例については、
(4) なお、例えば先天性の心疾患などの基礎疾患を有する患者は、その状態によっては、十分な注意が必要である。
現段階の情報において、いずれもワクチン接種との直接的な明確な因果関係は認められないと考えられるが、さらに入手可能な情報を次回までに収集する。
2.ワクチンの検定結果について
国立感染症研究所が実施したワクチンの検定においても、これらのワクチンの死亡報告のあった症例に投与されたロットについての試験結果は、全て変動域内にとどまり、逸脱は認められなかった。なお、宝塚例と西宮例で肺炎球菌ワクチンのロットが同一であったことについては、製造工程等の逸脱等について確認する必要がある。
その他、諸外国での状況や同時接種の安全性、接種者数等の情報について、早急に情報を収集し、次回検討することとする。また、死亡例とワクチンの関連性の検証のためには、関係者の協力を得て、今後、積極的疫学調査を行う仕組みを構築すべきである。