寒くなり、気管支喘息の発作を起こして、ネプライザーによる気管支拡張薬の吸入を行う必要のある患者さんが増えてきました。
アレルギー情報センター 気管支喘息ガイドライン
小児気管支喘息治療管理ガイドラインは、2000年にそれまで成人と小児が一つのガイドラインにまとめられていたところから日本小児アレルギー学会がガイドライン作成委員会を組織して小児版として作成しました。成人気管支喘息と比較して気管支喘息が慢性炎症性疾患であることは共通した病態ですがリモデリングやアウトグロー、治療薬の使い方、指導の方法における小児での特徴、特異性をいかしたものとなっています。 2002年には、治療薬の使い方を中心に大幅な改訂がされました。
一般小児科医、医療従事者への普及が進んでいる中で患者様や家族の方、さらに子どもにかかわる全ての職種の方々に理解して頂けることを期待しています。目次は、実際のガイドラインに沿ってわかりやすい表現にしています。
小児ぜん息の長期管理に関する薬物療法
ぜん息は、発作のないときにも気管支では炎症がおこっています。この炎症を積極的に治療して発作をおこさないようにすることがぜん息治療の目標であり治癒につながります。このことを長期管理と呼びます。
治療の目標として以下の6つをあげています。
小児ぜん息の治療の目標
1. 軽いスポーツも含めて日常生活を普通に行う
2. 昼夜を通じて症状がない
3. ベータ2気管支拡張剤の頓用が減少または必要がない
4. 学校を欠席しない
5. 肺機能がほぼ正常
6. ピークフローが安定
この目標を達成するために長期管理という考え方があるのですが、その内容は、薬によるものだけではありません。とかく薬の治療に偏ってしまうことが多いようですが、基本は、
1. 適切な環境整備
2. 適切な薬の使用
3. 本人、家族、幼稚園・学校の先生が小児ぜん息について正しく理解するために勉強することです。
1. 長期管理薬
長期管理のために使用される薬を長期管理薬(コントローラー)と呼びます。長期管理薬の特徴は、抗炎症作用をもっていることです。抗炎症作用とは気管支でアレルギー反応に関係する細胞、化学伝達物質の作用を弱めたり、減らしたりする作用を言います。
1) クロモグリク酸ナトリウム(インタール)
肥満細胞からの化学伝達物質の遊離を抑えます。運動の前に吸入することで運動誘発性喘息を抑えてくれます。インタール吸入液にベータ2気管支拡張剤を混ぜて吸入する方法も効果があります。
カプセルの粉末、ガスの粉末、液体があります。経口インタールは、ぜん息には効果がありません。
2) 経口抗アレルギー薬
小児ぜん息に使用されている抗アレルギー薬は、下表のとおりです。主に間欠型、軽症持続型、中等症持続型のぜん息に使用されます。一般的に2か月間ぐらい使用して効果を判定します。
3) 吸入ステロイド
吸入ステロイド薬は、気道の炎症を強力に抑え、症状の改善、肺機能の改善、気道の過敏性が改善します。これによって、ぜん息発作が減り、入院や喘息死が減少しています。
ぜん息を発症し早期に使用することでリモデリングを予防できます。
年齢や重症度、吸入方法で薬剤の選択、投与量を決めています。投与量の決定は、はじめ少量から開始するステップアップ方式と十分量から開始して症状の改善とともに減量するステップダウン方式があります。
副作用は、これまでの検討でベクロメサゾンで1日量400μg以下なら概ね問題がないと考えられていますが、個人差があるので十分注意が必要です。
4) テオフィリン徐放製剤
内服後ゆっくり薬が出てくるように工夫されていますので内服してから効果がでるまで時間がかかります。気管支拡張効果や抗炎症効果があります。
テオフィリンの体の中での分解は、個人差があります。血中濃度があがると副作用が出やすいので乳児、感染症時、脱水時、発熱時、併用薬剤があるときは注意が必要です。
5) ベータ2刺激薬
ベータ2気管支拡張剤(刺激薬)は、発作の時に使用する気管支拡張剤です。これらの薬を長期に使用しなくてはならない状態の時は、他の治療方法でステップアップを考えるべきです。
2. 長期管理薬の使い方
長期管理薬の使用は、重症度の評価をおこない、治療ステップを決めています。そのステップと年齢によって治療法を決めています。年齢別の治療ステップの表があります。
参考:喘息治療ガイドライン2007