今日は、水曜日です。
「本」当におすすめのコーナーです。
自助論 by サミュエル スマイルズ(著), 竹内 均(訳)
―人生の師・人生の友・人生の書
本書は、1858年に最初に出版されました。日本においては明治四年
に中村正直さんが『西国立志編』として出版され、当時総計100
万部も売れたそうです。福澤諭吉の『学問のすすめ』と並んで読ま
れたといいます。
この本はその明治の大ベストセラーの現代語訳版(原題は『Self-
Help, with Illustrations of Character and Conduct』)です。
「天は自ら助くる者を助く」という独立自尊の精神を広めた、古典
的名著でもあります。
▼自助論とは?
「天は自ら助くる者を助く」という言葉で、この本は始まります。
自助の精神の定義は、外部からの援助を受けないで、自分で自分を
助けようとする精神にこそ宿るといいます。また、ひとりひとりが
すぐれた生活態度を身につけることです。
自助というのは、勤勉に働いて、自分で自分の人生や運命を切り拓
くことにほかなりません。つまりは、他人や国にも頼らないことで
あり、「自己責任」という言葉が我が物顔でまかり通る現在には、
まさにぴったりの本ではないでしょうか。
この本には、努力、忍耐、常識、集中力、勤勉、忍耐、持続力、信
念、克己心、意志、活力、誠実、知恵、注意力、正確さ、手際よさ
時間厳守、迅速さ、正直などの言葉が何度も何度も出てきます。
まさにそれが自助を実践するための、エッセンスではないでしょう
か。
▼温故知新
この本が書かれた当時のイギリスは、世界最強の国でした。「ユニ
オンジャックが翻るところに太陽が没することはない」とまでいわ
れた時代なのです。世界最強だけでなく、世界からの富を集めて、
それをかなり上手に使って、文化貢献もしました。
ダーウィンが「種の起源」を著し、マックスウェルが電磁場の基本
方程式を導き、大英博物館が建立されたりし、最盛期のイギリスだ
ったのです。まさの自助の心をもったイギリス国民に支えられてい
たのでしょう。
しかしその後、現在のイギリスの勢いは衰え、いわゆる成熟病とな
っているともいえるのではないでしょうか。
この本の現代版が出版された当時の日本は、かつての世界の歴史に
なかったような自由と繁栄を謳歌し、そのイギリスのように、栄華
が果てないようにと警鐘を鳴らして出版されたのです。
当時はそういうイギリスの最盛期を再考しようという思いもあった
のでしょう。しかしその甲斐もなく、日本はバブル崩壊を向かえ、
繰り返される歴史に抵抗することはできないという原則を証明する
ことになりました。
しかしそうなったからこそ、いや、それゆえにこの本の重みが増す
のではないでしょうか。
▼ここが面白い
約150年前に書かれたとはいえ、そこにはいつの時代にも変わり
のないぼやきがあります。近頃の若い者は、低俗な雑誌や小説ばか
りを読んで、分別がないとか、常識に欠けているとか。
もうすでに紀元前2000年のころ書かれた書物にものあった内容
と同じことを言っているわけです。人類の歴史からみれば誤差の範
囲の期間ですね。
結局、人の世の営みは時代を経ても変わることなく、言葉や価値観
を少しずつ変えながら、本質のところは何にも変わっていないわけ
です。
自分の生きることができる人生よりも、もっと長い時間を経たこの
本に、不変性を感じて読めてしまうところに人というか、生き物と
しての面白さがあるのではないでしょうか。
大きな歴史という大波に身を浸すことができることが、日常からす
っぽりと切り離してくれて、ちっぽけな自分、でも、その中にある
可能性の大きさにも気づかせてくれる、とても面白い本です。
歴史的名著って、ほんとにおもしろいですね。
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