鎮魂のコンサート
4月12日、長野市のホクト文化ホールにおいて、指揮者「佐渡裕」、ピアニスト「辻井伸行」、BBCフィルハーモニーが共演するコンサートが開催された。
このメンバーによるコンサートは2度目となるが、前回は途中で中止となったのだ。前回は2011年3月4日から3月15日まで10会場でのコンサートが予定され、前半5回の公演が終了し、後半のスタートが2011年3月11日横浜みなとみらいホールであった。東日本大震災が発生した日である。この日、BBCのメンバーは会場である横浜みなとみらいホールに向うバスの中で大震災に遭遇した。メンバーの手記によると「横浜ベイブリッジに差しかかった時、異様な揺れでバスが止まり、しばらくバスは上下左右に激しく揺れていた。その時バスの中から反対車線を見るとトラックが横転している姿を見て、地震の発生とその大きさを知った。」とのことであった。
イギリス政府から即刻帰国するようにとの命令でツアーはそこで中止。その時「必ず再会しよう」と皆で誓い合い、その約束を実行すべく今回のツアーが再開されたのだ。佐渡裕は「同じオーケストラ、同じソリスト、同じプログラムで再びツアーが行えるなんて、奇跡だと思います」と言っていた。
2年前に実施された5会場の最後が松本市の松本文化会館での演奏であったとのことだが、2つあるプログラムの内、長野で演奏されたプログラムは松本会場と同じものであった。ただ今回は始まる前にエルガー作曲のエニグマ変奏曲より『ニムロッド』が演奏された。この曲はBBCのメンバーが「嘘偽りのない友情を表現し我々から日本の方々への誠実な友情を示したい」との希望から選曲したものだった。
様々な思いが込められたコンサートが始まる。あの時の情景を思い出しながら、そして被災された方々の幸せを祈りながら。
終了後、出口で佐渡裕さんが、被災者への募金を呼びかけていた。2時間の長丁場を終えた後なのに、必死に呼びかけている姿に頭が下がる思いであった。
4月12日のプログラム(Bプログラム)
・ブリテン 4つの海の間奏曲 作品33a
・チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調作品23
・ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」ホ短調作品95