稲盛和夫著「生き方」
稲盛和夫著「生き方」サンマーク出版
平成16年の発売以来93万部を超えるロングセラー。
著者の稲盛和夫氏は2010年経営破綻したJALの会長に就任し、わずか2年8ヶ月で再上場を成し遂げた人物である。JALの「奇跡の再生」の礎となった実践哲学がこの本に書かれている。
稲盛会長が、JALを再生するに当り、真っ先に行ったことが、社員の意識改革であったと言われている。この著書に書かれている「生き方」の具体的な方法を、社長以下役員などの経営幹部を対象に研修し、その後、課長クラスまで対象を拡大して実施され、JALのV字回復の大きな原動力のひとつとなったとのことである。
著書のプロローグにはこう記載されている。
「私たちはいま、混迷を極め、先行きの見えない『不安の時代』を生きています。豊かなはずなのに心は満たされず、衣食足りているはずなのに礼節に乏しく、自由なはずなのにどこか閉塞感がある。やる気さえあれば、どんなものでも手に入り何でもできるのに、無気力で悲観的になり、なかには犯罪や不祥事に手を染めてしまう人もいます。
そのような閉塞的な状況が社会を覆いつくしているのはなぜでしょうか。それは、多くの人が生きる意味や価値を見いだせず、人生の指針を見失ってしまっているからではないでしょうか。今日の社会の混乱が、そうした人生観の欠如に起因しているように思えるのは、私だけではないと思います。」
「そういう時代にもっとも必要なのは、『人間は何のために生きるのか』という根本的な問いではないかと思います。」
「私たち人間が生きている意味、人生の目的はどこにあるのでしょうか。最も根源的ともいえるその問いかけに、私はやはり真正面から、『それは心を高めること』、『魂を磨くこと』にあると答えたいのです。」
「『この世へ何をしにきたか』と問われたら、私は迷いもてらいもなく、生まれたときより少しでもましな人間になる、すなわちわずかなりとも美しく崇高な魂をもって死んでいくためだと答えます。俗世間に生き、さまざまな苦楽を味わい、幸不幸の波に洗われながらも、やがて息絶えるその日まで、倦まず弛まず一生懸命生きていく。そのプロセスそのものを磨き砂として、おのれの人間性を高め、精神を修養し、この世にやってきたときよりも高い次元の魂をもってこの世を去っていく。私はこのことより他に、人間が生きる目的はないと思うのです。・・・」
「現世とは心を高めるために与えられた期間であり、魂を磨くための修養の場である。人間の生きる意味や人生の価値は心を高め、魂を練磨することにある。まずは、そういうことがいえるのではないでしょうか。」
マザー テレサ「思考に気をつけなさい」
「人生は心一つの置きどころ」とは、思想家・中村天風先生がよく使われていた言葉である。人間の心が思うことや考えることが、人生を良くもし悪くもする。思い方や考え方が積極的であれば、前向きに物事が進み、消極的であれば、後ろ向きになる。何事においても、其の時の心の状態が、成功も生むし失敗も生むということである。
ジェームズ・アレンも「原因と結果の法則」の中で、自分が考えてきたこと(原因)が、自分の今の環境(結果)を作っているといっている。自分の現在は、自分の過去の行動の積み重ねの結果として生まれたものであるとのことである。
マザー・テレサも以下の言葉で教えている。
「思考に気をつけなさい
それはいつか言葉になるから
言葉に気をつけなさい
それはいつか行動になるから
行動に気をつけなさい
それはいつか習慣になるから
習慣に気をつけなさい
それはいつか性格になるから
性格に気をつけなさい
それはいつか運命になるから」
「逝き方」
年末から続いている寒波の影響があるのだろうか、ここにきて知り合いの方々の訃報に接することが増えている。
先日、立て続けに2人の被後見人が亡くなった。家族や身寄りが居ない人の後見人を引き受けるケースが多いのだが、亡くなった2人の被後見人にも身近な家族が居なかった。1人は病院から直接火葬に付され、葬儀を行うこともなくお寺に安置された。もう1人は、施設生活が長かったため仲間も多く、施設の希望で告別式も執り行われた。施設の友達や関係者約30人が参列し、涙を流しながらの告別式だった。たまにお会いすると、はにかみながら、ぼそぼそと話していたその姿が私の脳裏に焼き付いている。
亡くなる前に2人とも入院して治療をうけたのだが、医者からどこまでの治療をするのか聞かれ、「後見人には医療同意権はないのでそちらで判断してください」と杓子定規に断っている自分が情けなく思えた。人の生き死の前で法律がどれだけの力を持っているのか、身内が居なければせめて関係者の合意で対処出来るようにしてもらいたいものだ。
今の私の考えは、「人には寿命がある、いつかは死ぬ」という前提で、なるべく自然な状態でその人の人生を終わらせてやりたいと思い、基本的には延命措置はとらないことにしているが、これで良いのか迷うことが多い。平穏死についてももっと勉強して周りの人と認識を共通にしたいところだ。