「ガルシアへの手紙」
「ガルシアへの手紙」エルバート・ハバード著 ハイブロー武蔵 訳・解説
この本は、キングスレイ・ウォードの「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」第19通『読書の価値』の中で紹介されていました。
著者のエルバート・ハバードは、アメリカの著名な教育者で、この物語は1899年に、ハバードがわずか1時間で書き上げたものです。とても簡単でわかりやすく書かれていますが、人間にとって非常に重要で基本的な教訓が含まれており、何時の時代でもこのような人物が必要とされています。
この本は、1913年には原本が4,000万部も印刷され、その後ロシア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、トルコ語、ヒンズー語、中国語などに翻訳されて世界中で読まれています。
日本では、日露戦争中、日本軍が捕虜としたロシア兵が皆「ガルシアへの手紙」を携えていたことから直ちに翻訳され、勅命により官僚や将校に配布されたといわれています。
2001年にハイブロー武蔵氏が改めて翻訳・解説した本が刊行され、再び日本で注目されるようになりました。
わずか13ページに収められたこの物語は、就活で苦労している学生やマニュアル通りにしか答えられない今の若者には是非読んで貰いたい本だと思います。
短いこの本の中で二箇所紹介しておきたい場所があります。
●1ヶ所目
『キューバ紛争がらみにおいて、私の記憶の中に、まるで、火星が大接近してきた時のように、最もはっきりと思い出す人物がいる。
アメリカとスペインとの間で、キューバをめぐって戦争が起きた時、合衆国は、どうしても、すぐに反乱軍のリーダーと連絡をとらなくてはならなかった。
そのリーダーの名はガルシアという。
キューバの山奥の要塞にいるらしい。
それがどこにあるのかは誰も知らない。
郵便も電報も届かない。
しかし、大統領はガルシア将軍の協力を取りつけなくてはならないのだ。
そして、それは、至急を要する。
どうすればいいのだ。
誰かが大統領にこう言った。
「ガルシアを見つけ出せる人間がいるとしたら、それは、ローワンという名の男です」
ローワンは呼ばれた。
そして、大統領からガルシアへの手紙を受け取った。
私は、ローワンという名の男が、どのようにガルシアへの手紙を受け取り、それを防水の小袋に密封し、彼の胸に革ひもでしばりつけ、四日後の夜に小船でキューバの海岸に上陸し、ジャングルの中に消えていき、敵地を歩いて横断し、ガルシアに手紙を渡し、三週間後に別の海岸に現われたかを、詳しく語ろうとは思わない。
ただ、言いたいことは、次のようなことだ。
それは、マッキンレー大統領がローワンにガルシアへの手紙を渡したが、そのときローワンは、その手紙を黙って受け取り、「ガルシアはどこにいるのですか」と聞かなかったということである。』
●2ヶ所目
『皆さんにちょっと試してほしいことがある。
今、あなたはオフィスにいる。
そしてすぐ近くに6人の部下がいる。
その中の一人を呼び、次のように頼んでみてほしい。
「コレッジョの生涯について、百科事典で調べ、簡単なメモをつくってほしい」と。
その命じられた部下は、何も言わずに、「わかりました」と言い、そして、その頼まれた仕事をやるだろうか。
おそらく彼は、そうしないはずだ。
彼は、どんよりとした、やる気のない目であなたを見て、次のような質問の一つや二つをするにちがいない。
「コレッジョとはどんな人ですか」
「どの百科事典を調べるのですか」
「百科事典はどこにあるのですか」
「私はそのためにここで仕事をしているのですか」
「ビスマルクのことですか」
「チャーリーにやらせたらどうですか」
「コレッジョは生きている人なんですか」
「「急ぐんですか」
「私は百科事典を持ってきますから、ご自分で調べたらどうでしょう」
「なんのために知りたいんですか」
あなたが部下の質問に答えて、どのようなやり方で情報を求めるか、なぜその情報が必要なのかを説明した後に、その部下は、十中八、九、他の社員に≪ガルシア≫を見つける手伝いをさせたうえで、『そんな≪ガルシア≫というような男はいません』とあなたに報告するであろう。」