「『平穏死』10の条件」
「『平穏死』10の条件」
著者 長尾和宏
・著者は、現在約100人のスタッフと共に、1日約200人の外来患者と約300人の在宅患者に対して年中無休で対応している医師である。
・町医者として17年間在宅医療に取り組み今までに在宅で看取った患者さんは約500人に達しているとのこと。
・そんな著者が、平穏に在宅で亡くなるための10の条件を解説している。
・石飛幸三医師の「平穏死のすすめ」と併せて読まれると、人の死の迎え方が見えてくる。
・以下、本書について感じた部分を書き抜きました。
【平穏死10の条件】
①平穏死できない現実を知ろう
・8割の人が、平穏死を望んでいるが、8割の人が平穏死できないのが現実
・どこまで延命治療をするのか
・平穏死を妨げているのは「終末期医療の現実への無関心」である。
②看取りの実績がある在宅医を探そう
・できるだけ、元気なうちから平穏死の実績のあるかかりつけ医を探しておく
③勇気を出して葬儀屋さんと話してみよう
④平穏死させてくれる施設を選ぼう
・施設を終の棲家と決めた場合、病院に搬入せずに平穏死を迎えさせてくれる施設を選ぶ
⑤年金が多い人こそ、リビング・ウィルを表明しよう
・延命治療に関する自分の意志「リビング・ウィル(L・W)」を元気なうちに書面で残しておく。
・具体的には日本尊厳死協会に入会し、L・Wを表明するのが最も確実。
⑥転倒→骨折→寝たきりを予防しよう
・これを2回繰り返すと、ある程度の年齢の認知症の方なら必ずと言っていいほど認知症状が出て来る。
⑦救急車を呼ぶ意味を考えよう
・「救急車を呼ぶ」ということは、蘇生、それに続く延命治療への意思表示。
・在宅看取りと決めたら救急車を呼ばずに在宅主治医に電話して待つ。
・末期がんや難病の終末期や老衰になったら、大きな病院に主治医がいても、往診してくれる「かかりつけ医」を別に持つ。
⑧脱水は友。胸水・腹水は安易に抜いてはいけない
・すでにがんや老衰で不治かつ末期の状態になり、これから平穏死に向おうという場合、脱水は決して悪くない。脱水状態では体全体が省エネモードになります。
⑨24時間ルールを誤解するな。自宅で死んでも警察沙汰にはならない
・医師法20条には「24時間以内に診察していれば医師は死亡に立ち会わなくても死亡診断書を発行できる」となっているが、これが「24時間以内に診察していなければ、死亡診断書を発行できない。つまり警察に届けなければいけない」と誤解している医療者が多い。
⑩緩和医療の恩恵にあずかろう
・在宅ホスピス医の条件は、病気だけでなく、人間、そして生活を診ることです。患者さんの「痛み」としっかり向き合うことが必要です。
【胃ろうの問題について】
「日本で胃ろうを造設している人の8割は、脳梗塞などの脳血管疾患と認知症終末期の患者さんです。2割がALSなどの神経難病の患者さんだといわれています。・・・認知症終末期や老衰の胃ろうは『延命治療』ですが、神経難病では『福祉用具』です。」
「なぜ医師は高齢者にも胃ろうを造りたがるのか。その本心は、
①胃ろうを造らないと患者さんが餓死する。延命こそが医師の使命だ。
②胃ろうを造らないと、家族や遠くの親戚から訴えられるかもしれない。
③病院から患者さんを追い出すためには胃ろうが必要。」
◎病院では、どうして延命治療がよく行われるのか?
「病院は、死は敗北と考えており、訴訟回避などの要因が考えられる。」
「自力で歩けず車椅子で来院された患者さんに抗がん剤を打ち、衰弱してくると入院させ、高カロリー輸液につなぎます。お腹や胸に水が溜まるとそれを抜き、抜いた分をまた輸液をします。水膨れになって苦しむので、最後は麻酔で眠らせて、病院のベットで臨終となります。それが日本の多くの終末期医療の現状です」
「医療者は生活の質(QOL)にあまり目を向けようとしません。末期がんで余命一ヶ月の患者さんに対して、QOLを犠牲にして抗がん剤治療を続ける現実にいつも疑問を感じます。本当のQOLとは、「命の品格」なのです。」
「在宅医療の目標は「QOL×寿命」が最大になるように工夫することです」
「現在の法的環境では、延命治療は必然です。救急車で病院に運ばれてしまうと、蘇生処置から延命治療に至った場合、家族が希望しても簡単に中止できないのは法的担保がされていないためです。」
「親の身勝手で子供が」
読売新聞に「きしむ親子」が連載されている。離婚にまつわる様々な問題点が子供を中心に書かれているが、「親権争い」「面会交流で会いたい親と会わせたくない親」「再婚後の義父の虐待」「母子家庭の経済事情」等の問題がある中で子供の心が如何に苦しめられているのか、その痛さが伝わってくる。親の離婚で一番傷付いているのは子供達なのだ。
10月28日の記事には下記の数字が示されていた。
「母子世帯の2010年の平均収入は291万円で、子供のいる世帯平均(658万円)の半分以下。」
「大学進学率は、初婚の2人親家庭では約60%だったのに、離婚した一人親家庭では約15%にとどまった。」
「母子家庭のうち養育費が支払われているのは2割にとどまる。」
「東北大学の下夷美幸准教授によるとスウェーデンやドイツなどでは、養育費の不払いが生じた場合、国が立て替え、その分を相手から徴収する仕組みがある。米国でも、行政が不払いの親の居所を捜し出し、給与から天引きするなど強制的に養育費を徴収しているという。」