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雑草の生存戦略
「踏まれたら立ち上がらない」


「雑草魂」というと踏まれても踏まれても真っ直ぐ立ち上がって生きる強さと思っていましたが、「雑草の生き方研究家」の稲垣真衣さんが「月刊保団連2022年3月号」に、「雑草の生存戦略に学ぶ」という興味深い文章を掲載してありました。いろいろの雑草を取り上げていますが、ここではタンポポとオオバコを紹介します。この堅苦しい世の中で生き方に疑問を持ち、何ともならないもどかしさを感じている方も多いと思います。人生を考える上でこんな考え方もあるんだということを感じて参考にして下さい。 著者の文章をほぼそのまま引用させていただきます。

「踏まれても立ち上がる」は本当?
『タンポポは踏まれないところでは、茎を高々と伸ばし、よく踏まれる場所では地面にべたっと張り付くようしています。踏まれて茎が倒れてしまったのではありません。タンポポは葉っぱが踏まれる刺激を受けると、自分から茎を横に伸ばし、踏まれる衝撃を逃しているのです。さらに葉を放射状に広げて、地面にぴったりとつけています。 植物が縦に伸びるのは、他の植物よりも高い位置に葉を広げて光合成をするためです。 しかし、踏まれる場所では植物は縦に伸びるより地面にぴったりと葉をつけることによって、日光を浴びる ことができるのです。こうして踏まれながら、タンポポは光合成を行い、力を蓄えるのです。・・・・  タンポポにとって大切なことは、花を咲かせて、種子を残すことです。そうであるとすれば、踏まれても踏まれても立ち上がるよりも、踏まれながら花を咲かせることを考えます。つらいときは無理に立ち上がるのではなく、次のチャンスに向けてしっかりとエネルギーを蓄えるのです。立ち上がることに目を奪われず、大切なことを見失わない。それがタンポポの生き方なのです。』

ストレスを受け流すしなやかさ
『オオバコの茎は、よくしなります。引っ張り合っても簡単にちぎれることはありません。そのため、オオバコの茎は 草相撲にもってこいなのです。オオバコは別名を車前草と言います。車が通る道に多く自生していることが、その名前の由来です。人間に踏まれるだけでなく、大きく重い車に轢ひかれても負けていません。しかし、オオバコは踏まれることに、歯を食いしばって耐えているわけではありません。上手に踏まれることでストレスを逃しています。よくしなって、ちぎれない茎は踏まれることに強い秘密の一つです。・・・ また手で簡単にちぎれるほど柔らかい葉で、踏まれる衝撃をうまく逃します。しかし柔らかいだけではちぎれてしまいます。そのため、葉の内側に骨の役割を担うような硬く太い筋を持っているのです。硬い体で守ることだけでもダメですし、柔らかく衝撃を逃すことだけを考えていてもいけません。オオバコの茎や葉は、この両方を併せ持つから強いのです。 さらに、オオバコの種子は水に濡れるとゲルのように粘性を持ちます。そのため、雨が降って地面が濡れた後、その場所を人間や動物が踏み、車が通ることで、その足やタイヤに種子がくっつきます。そうしてオオバコはくっつき虫のように、人間の足の裏にしがみついて陣地を広げていくのです。つまりオオバコにとって、踏まれることは耐えることではありません。踏まれることを利用して繁殖しているのです。オオバコの生き方はストレスの対処法を教えてくれます。凝り固まった頭でむやみに「頑張れ」と体にむち打っても、いつかストレスに身体を壊されてしまいます。自分自身の内面に簡単にちぎれることのない硬い芯を持ちながらも、柔らかい発想でストレスをうまく受け流します。そして、逆境は耐えることでも、克服すべきことでもありません。逆境すらも利用してやれば良いのです。』

 日本ではしばしば「 雑 草 魂 」という言葉がもてはやされます。踏まれても必死に生きる雑草の姿を、つらいことにも耐えて努力するという人間の教訓に仕立てたのでしょう。しかし、著者が言うように、よく観察してみると踏まれている雑草は、踏まれるたびに立ち上がることはしていません。頻繁に踏まれる場所だと立ち上がることをやめてしまうのです。何だか情けないような感じもしますが、そうではありません。「踏まれたら立ち上がらない」ことが雑草の戦略で、むしろ「踏まれて自分の居場所を見つける」、そこに本当の雑草魂があるのです。著者はこのように雑草の生存戦略を述べています。生きていく自分の居場所を見つけるため、ストレスを緩和するために発想の柔軟性、しなやかさの重要性を雑草の生存戦略から学ぶことができそうです。

令和4年5月  西牧敬二

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