2016/01/29
2月のテーマ- 《 働く 》
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2016年2月1日
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・有賀泰治
1、「万里一空の境地を求めて日々努力、精進いたします」
・・・・・大関 琴奨菊
大相撲初場所で、悲願の初優勝を果たした琴奨菊が2011年の秋、大関昇進の伝達式で述べた口上だ。
「万里一空」とは剣豪宮本武蔵が『五輪書』に記した言葉。様々な意味に取れるが、大関は、“ どんな努力も目指す先は一つ。目標を見失うことなく努力する ” と誓った。この言葉の通り、今場所は自分の目指す相撲に徹した。
低く、鋭い立ち合いで相手の懐に入り、得意のがぶり寄りで、アッという間に土俵際へ追い込む。反撃の隙すら与えない、一気呵成(いっきかせい)の攻めが光った。
心も一直線だった。11日目に横綱白鵬を倒した後、「自分を信じてできた」と語り、残りの土俵も「ぶれたら終わり」と戒めた。来し方を振り返れば、何度も怪我に泣き、大関からの陥落も5度。一方、今場所は “ 10年ぶりの日本出身力士の優勝か ” と、周囲は日増しに騒がしくなり、プレッシャーもあっただろう。だが、そんな苦闘や過去の重圧をはねのけて、賜杯をつかんだ。
“ 必死で成し遂げる ” と、諦めない強さを、大関 琴奨菊に学んだ。今年もはや2月だが、一年を相撲の場所に置き換えれば、まだ初日を終えたばかり。
私も自ら掲げた目標へ一心に突き進む気力が湧いてくる。
2、努力を継続できる。平凡に見えて、これほど強い生き方はない。
中国の春秋時代。斉の国の宰相の・晏嬰(あんえい)は博学多識にして、民の心を汲んだ政治を貫き、名声を馳せた。
彼の本領はどこにあったのか。自らこう語っている。「嬰(えい)は人に異なることあるにあらざるなり、常になして置かず、常に行きて休まざる者なり」(山田琢解説「嬰子春秋」明徳出版)。
自分は人と変わったところはない。あるとすれば、何事も中途半端にせず、進み続けて休まなかっただけ。悔いのない一日一日をと心に誓っているだけ。
3、大いなる夢と理想を抱き、自分の道に打ち込む
「いい年したおっさんが夢見て何が悪い。町工場が夢見て何が悪いんだ!」
職人の腕とプライドをかけ、巨大企業がなし得ないプロジェクトに挑む町工場の社長が熱かった。直木賞受賞作『下町ロケット』原作のテレビドラマだ。
最先端の粋を集めたロケットも、小さな企業が手作業で作った一つの部品がなければ、飛ばすことはできない。資本金や従業員の数では測れない、世界に誇る技術や職人魂が、日本の中小企業には宿っている。
北海道・足寄町に小さな町工場がある。ここで製造される煙突は、結露や氷結を防止できる、国内有数の品質。数千本の煙突を全国に送り出してきた。製造過程では、途中まで機会を用いるが、仕上げの微妙な部分は、拍子木で叩いて成形する。
「最後に信頼できるのは、培ってきた自分の感性と自分の腕一つ。他には負けない」
機械にも及ばぬ精密な匠の技。それは受け身の姿勢からは生まれない。
4、 同じ環境に身を置いても、生命の環境によって見え方が変わってくる。
銀行のATMを監視する部署に配属された人のこんな話を読んだ。
業務はATM近くにある電話からの問い合わせに対応すること。お客によっては、お金の出し入れができず、怒りをぶつけてくる。繰り返し聞く強烈な言葉に、退職さえ考え始めた。上司に胸の内を告げると、同僚がお客に対応している録音を聞いてみようと提案された。同時にお客が “ ありがとう ” といった回数、自分が “ この客は嫌だ ” と思った回数を数えるよう指示された。
約70件の録音のうち、やだと思ったのは5件。「ありがとう」は40回も耳に入ってきた。日頃は、 “ この仕事は怒られるもの ” と思い込み、お客の感謝の言葉を聞き流していたのでだ。(『対話の達人Ⅱ』出版文化社)
縁に触れて喜怒哀楽が移ろいでいくのが生命。大切なのは、生命の基底部をどこに置くか。崩れざる幸福境涯を目指して、自分を鍛えようと決めた人は、試練の中にも、成長の喜びを見出せる。この強い心をつくり、鍛えるために、仕事がある。
5、高い理想を掲げる人生にとって、ねたまれ、悪く言われるのは、むしろ自分が前進している証明・・・そう決めて困難を乗り越えていく勇気の心。
「憎らしいほど強い」というのは、力士にとって、むしろ褒め言葉だろう。横綱在位63場所、在位中の670勝は、現役横綱白鵬と共に歴代1位。昨年亡くなった昭和の大横綱・北の湖だ。
あまりの強さに「負けろ!」のヤジがよく飛んだ。氏はそれが 「うれしかった」という。「勝負の世界は勝って憎まれるのが花だと思う。負けろ!と声がかかることは、周囲の注目を浴び、自分が強い証拠なのだ」(『もう1歩、前へ出れば勝てる』ごま書房)
「常に勝つことが責任つけられているのが横綱」と自らに言い聞かせ、 “ 稽古の鬼 ” となって綱を張り続けた氏には、周囲の雑音を耳を貸す暇などなかった。ケガで成績が落ち、「がんばれよ!」と声をかけられるようになった晩年、逆に「自分が情けなくなって仕方がなかった」
6、仕事の喜びを知る秘訣は、たった一つの言葉で言い表すことができる。
それは、
「良い仕事をするためには、それを “ 楽しんで ” やることだと知ることである」
・・・・・作家/パール・バック
そもそも仕事というのは、人間が生きるために求められる役割分担であろう。その役割分担は義務であったが、仕事の成果がよく出ることで人が喜んでくれるのを見ると、とても嬉しく思えるようになった。そうしているうちに、人は仕事を知れば知るほど、できればでくるほどにすきになり、ますます励んでいこうとする。
こうなると、次には、仕事こそが生きがいであり、人生の楽しみであるという境地にいく人間も多く出てくる。
楽しみながら仕事をすることで最高の成果を生み、それが人生の最高の価値となるという善の環境が出来上がる。
ノーベル賞を受賞した江崎玲於奈博士は、「学問を知っている人は、学問を愛する人に及ばない。学問を愛する人は、学問を楽しむ人に及ばない」と述べている。
これは、次の論語の孔子の言葉をもじったものだろう。
「子曰く、これを知る者は、これを好む者におよばない。これを好む者は、これを楽しむ者に及ばない」学問だけでなく、すべての仕事において楽しむことが一番である。
7、忙しくしているからといって、本当に仕事をしているとはいえない。すべての仕事の目的が実施され、あるいは達成されるには、忙しく汗をかくのと同じくらいに、将来を見通し、システム、プランニング、情報、正しい目的が必要なのだ。ただ仕事をしているように見えるだけでは、何もしていないのと変わりないのである。
・・・・・発明家/トーマス・エジソン
エジソンの有名な言葉「天才とは 1 %の才能と99%の汗で作られる」から、ただ汗をかけばよいと誤解する人も多い。
ここでのエジソンの言葉をかみしめたいものである。汗をかいて忙しくしている人でも仕事ができない人は多い。仕事のできない人にも2種類いる。
一つのタイプは、見た目にもやる気がなく、サボることばっかり考えている人間である。これはもう論外の “ できない人” である。
もう一つのタイプは、ここでエジソンが注意しているように、見た目には忙しく働いているが、実は、その仕事の中身をよく問うと、ほとんど意味のないことをしている人である。
こういう人はけっこう多いのだが、こうした仕事に自己満足してしまっている厄介な面がある。仕事は何のためにするのか。それは、会社、組織の目指す目的、目標を達成していくことである。その成果を出さなければ、仕事をする意味がない。人の成長にも、こうした成果を出す仕事を遂行することで初めて可能となるのだ。
8、知恵もアイデアも宝も、毎日の仕事に隠されている
自分の立っているところを深く掘れ。そこからきっと泉が湧き出る。
・・・・・思想家/高山樗牛(ちょぎゅう)
エジソンは言う。
「私たちが大きなチャンスを見逃しているのは、ほとんどそれが日々の仕事に隠されているからだ」と。今、自分が就いている仕事は、不本意なのかもしれない。
自分の夢や目標は大きく、もっと別の仕事や環境でないと実現できるものではない、と思っているかもしれない。
しかし、実はチャンスや次のステップというのは、今やっている仕事に真剣に打ち込んでいることから見つかるというのがほとんどであることを知るべきだ。
三洋電機を創業した井植歳男は、資金もない体も弱い、人もいないという義兄、松下幸之助の下で、商品の製造や販売に打ち込み、会社(現パナソニック)を支えた。そしてのちにその分野で創業できた。
稲盛和夫氏は、すべての就職先を断られ、最後に拾ってくれたセラミック会社で、毎日セラミックと格闘し、これがのちの京セラの事業の核となっていった。
「三六五日、日々、仕事を工夫せよ」と稲盛氏は言う。
9、チームメイトがあなたのために何をしてくれるかではなくて、あなたがチームメイトのために何ができるかである。
・・・・・プロバスケットボール選手/マジック・ジョンソン
チーム、組織が強くなるためには、そして成果を出していくためには、個々のメンバーが今チームのために、自分は、何をするべきか考えて動かなければならない。
これはスポーツにおけるチームプレーを見るとよくわかる。いわゆるエースと呼ばれる中心選手は、エースだから自分の好きなようにプレーしてよいわけではない。スタンドプレーに走り、自分が目立つために動く者が仮にエースと呼ばれているなら、そのチームは弱い。
メンバーが願い、自分も、ここは自分で決めるのがベストだと判断した時に、決められるのがエースというものだ。
ここでは、スポーツを例にとったが、このチーム・組織とメンバーの関係は、どの分野にも当てはまることだろう。
アメリカの元大統領ケネディは、国家と国民の関係にも、これを求めた。独立自尊した国民が多くいる国が強い国となるからだ。
10、全身全霊、心を込めて仕事をしなさい。そうすればあなたは必ず成功する。なぜならば、そういう人はほとんどいないからである。
・・・・・教育者/エルバート・ハバード
心を込めて、それも全身全霊で動く人、働く人には、誰も敵はなくなる。たとえば、男性が女性を口説く時、成功するかはほとんど男性の心からの誠意があるかどうかにかかっている。どこまで彼女のことを思っているか。これからの人生、彼女をどれだけ大切にし、自分と共に人生の喜びを分かち合うかどうかを考えているか、ではないか。
見た目の良さや学歴、財産も強力なライバル的要素だが、それは、必ず乗り越えていけるものだ。それよりも心がどれだけ真剣かが大事なのだ。それで心が動かない相手がいれば、選んだ相手に見る目がないだけだ。
仕事も全く同じである。口先だけではなく、心を込めて仕事ができる人は本当に少ないのだ。だから、全身全霊、心を込めて仕事をする人は必ずその人生で、大きな成果を出すようになる。これは、絶対に保証できることだ、とエルバート・ハバードは力説するのである。
11、人生は実行であり現実である。
百の各論より、一の凡策である。
順境にして悲観し、逆境にして楽観する。
・・・・・出光興産創業者/出光佐三
人生は実行であり続けることを、出光佐三の人生は見事に示した。
2013年の本屋大賞を受賞した百田尚樹氏の『海賊とよばれた男』(講談社)はその出光佐三の伝記である。
出光佐三の周りには出光を信奉する多くのものたちが、ありとあらゆる情報を持ってくる。それをもって、見事に、敵(対抗し邪魔しようとする日本の官僚、石油メジャー)の妨害を見抜いてすぐ手を打つのだ。その先はどこを見つめていたのか。
アンドレ・マルローの質問にこう答えている。
「ヨーロッパは物を中心とした世界ですが、日本人は人を中心とした世界です」
「私は、人間も信頼するという考え方を広めていくことこそ、日本の世界的使命と言ってます」
12、何をやるのかを決めるのは簡単。
何をやらないのかを決めるのが大事。
・・・・・デル創業者/マイケル・デル
やるべきことを決めたとしよう。あとは、やるべきことをひたすら前え進めばよさそうなものだが、そう簡単にはいかない。
人には次から次へと新しい用事ができていく。昔から、そしてこれからも、今これをやるべきだという提案が出されてくる。
昔からよさそうだと思ってやり続けていることも多い。
あれやこれで、結局、本当にやるべきことに費やす時間というのは少ないのだ。
だからデルは、何をやらないかを決めるのが大事だというのだ。そのためにも、自分の目標をしっかりと立て日々確認していく中で、これから本当に必要なことだったのか、これから必要なのかを厳しく精査していかなければならない。
強い意志と強い目標達成への願望があって、できることかもしれない。
13、今月の言葉
ガッツ石松さんが 語る"最強の運"を手にする要諦
・・・・・ガッツ石松さん (元WBC世界ライト級チャンピオン)
毎日、何もないアパートに帰っては、枕を抱えて泣いていたけど、きょうよりは明日は良くなる、明日後日はもっと良くなると自分に言い聞かせていた。
それが一芸に秀でるってことじゃないの? 一つのことをやり通した結果がチャンピオンなんだよ。あと一皮、あと一皮剥ければ、というところでみんな挫けていく。それがプロの世界だ。それでも頑張って這い上がってくるやつだけが最後に君臨するんだよ。
頑張って、頑張って頑張っていると自然と運が寄ってくる。それは一度逃げるんだけど、それでも頑張り続けると、また戻ってくる。行ったり来たりするんだよ、運というやつは。
それでも頑張り続ける底力のあるやつだけが、最後に最強の運を手にすることができる。
一度きり
生も一度きり、死も一度きり、一度きりの人生だから、一年草のように、独自の花を咲かせよう
・・・・『坂村真民一日一言』
人の道
人の道を守らない人間、親を大事にしない人間、恩ある人に砂をかける人間に、運はついてこない
・・・・・樋口武男(大和ハウス工業会長)
【一途一心】
一途一心とはひたすら、ひたむきということである。一つの事に命を懸けること、ともいえる。あらゆる道、あらゆる事業を完成させる上で、欠かすことのできない心的態度である。物事の成就はこのコア(核)なくしてはあり得ない。
イエローハット創業者の鍵山秀三郎氏は、ある時若い人たちから成功の秘訣を問われ、「成功のコツは二つある」と答えて白板に、「コツコツ」――と板書されたという。
コツコツは一途一心と同義である。その根底にあるのは無心である。心に雑念、妄念が入っては、人間、コツコツにはなれない。人生の先達も一致して一途一心の大事さを説いている。倫理研究所の創始者、丸山敏雄氏の言葉。
「己の一切を学問に捧げ、事業に傾け、仕事に没頭してこそ、はじめて異常(ふしぎ)の働きができる。己の大きな向上、躍進、完成は己を空しくすることである。身を捧げることである。ここに必ず真の幸福が添うのである」
誠実
何事にも前を向いて誠実に粘り強く取り組んでいけば、必ず解決策は見えてくる
・・・・・定保英弥(帝国ホテル社長兼帝国ホテル東京総支配人
仕事の本質
仕事は自己の能力を伸ばし、自分を成長させると同時に、他人にも繁栄と貢献をもたらすもの
・・・・・田辺昇一(タナベ経営創業者)
仕事の本質
仕事の本質は人の役に立つこと、もしくは人の役に立つものをつくること
・・・・・末石藏八(キシヤ会長)
いい仕事
苦労して苦労して積み上がっていった人間のほうがいい仕事をする
・・・・・亀井正文(筆工房亀井代表)
仕事の心得
仕事を持つとは責任を持つこと。やり遂げなくてはいけないという覚悟を持って、粘り続けないと初級者にもなれない
・・・・・木村 孝(染織研究家・随筆家)
それが仕事というもの
私は人のやらないことをやろうと考えています。やれそうもないことを成し遂げるのが仕事というものとちがいますやろか
・・・・・安藤百福(日清食品創業者)
よく働きよく生きる
よく働いた者がよく眠るのと同じで、よく生きた者がよく死ぬことができる
・・・・・中川一政(画家)
仕事の間隙を埋める
私の仕事ではない。
あなたの仕事でもない。
誰の仕事でもない仕事が
放置されている組織は、
そこから腐敗する
・・・・・内田 樹(神戸女学院大学名誉教授)
すぐにやる
気づいたらすぐやる人が成功する
・・・・・丸淳一(アスカ社長
仕事とは
仕事をするということは時間を使うことであり、それは命を使うということ
・・・・・佐藤芳直(S・Yワークス代表/3000社を超える企業の経営に携わってきた一流コンサルタント)
仕事
仕事ほど楽しいものはないし、仕事ほど人を成長させるものはない
・・・・・平林武昭(日本システム技術社長)
仕事の面白さ
仕事の面白さは現状を打破するところにある
・・・・・瀬戸山隆三(千葉ロッテマリーンズ顧問)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2016年2月1日
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・有賀泰治
1、「万里一空の境地を求めて日々努力、精進いたします」
・・・・・大関 琴奨菊
大相撲初場所で、悲願の初優勝を果たした琴奨菊が2011年の秋、大関昇進の伝達式で述べた口上だ。
「万里一空」とは剣豪宮本武蔵が『五輪書』に記した言葉。様々な意味に取れるが、大関は、“ どんな努力も目指す先は一つ。目標を見失うことなく努力する ” と誓った。この言葉の通り、今場所は自分の目指す相撲に徹した。
低く、鋭い立ち合いで相手の懐に入り、得意のがぶり寄りで、アッという間に土俵際へ追い込む。反撃の隙すら与えない、一気呵成(いっきかせい)の攻めが光った。
心も一直線だった。11日目に横綱白鵬を倒した後、「自分を信じてできた」と語り、残りの土俵も「ぶれたら終わり」と戒めた。来し方を振り返れば、何度も怪我に泣き、大関からの陥落も5度。一方、今場所は “ 10年ぶりの日本出身力士の優勝か ” と、周囲は日増しに騒がしくなり、プレッシャーもあっただろう。だが、そんな苦闘や過去の重圧をはねのけて、賜杯をつかんだ。
“ 必死で成し遂げる ” と、諦めない強さを、大関 琴奨菊に学んだ。今年もはや2月だが、一年を相撲の場所に置き換えれば、まだ初日を終えたばかり。
私も自ら掲げた目標へ一心に突き進む気力が湧いてくる。
2、努力を継続できる。平凡に見えて、これほど強い生き方はない。
中国の春秋時代。斉の国の宰相の・晏嬰(あんえい)は博学多識にして、民の心を汲んだ政治を貫き、名声を馳せた。
彼の本領はどこにあったのか。自らこう語っている。「嬰(えい)は人に異なることあるにあらざるなり、常になして置かず、常に行きて休まざる者なり」(山田琢解説「嬰子春秋」明徳出版)。
自分は人と変わったところはない。あるとすれば、何事も中途半端にせず、進み続けて休まなかっただけ。悔いのない一日一日をと心に誓っているだけ。
3、大いなる夢と理想を抱き、自分の道に打ち込む
「いい年したおっさんが夢見て何が悪い。町工場が夢見て何が悪いんだ!」
職人の腕とプライドをかけ、巨大企業がなし得ないプロジェクトに挑む町工場の社長が熱かった。直木賞受賞作『下町ロケット』原作のテレビドラマだ。
最先端の粋を集めたロケットも、小さな企業が手作業で作った一つの部品がなければ、飛ばすことはできない。資本金や従業員の数では測れない、世界に誇る技術や職人魂が、日本の中小企業には宿っている。
北海道・足寄町に小さな町工場がある。ここで製造される煙突は、結露や氷結を防止できる、国内有数の品質。数千本の煙突を全国に送り出してきた。製造過程では、途中まで機会を用いるが、仕上げの微妙な部分は、拍子木で叩いて成形する。
「最後に信頼できるのは、培ってきた自分の感性と自分の腕一つ。他には負けない」
機械にも及ばぬ精密な匠の技。それは受け身の姿勢からは生まれない。
4、 同じ環境に身を置いても、生命の環境によって見え方が変わってくる。
銀行のATMを監視する部署に配属された人のこんな話を読んだ。
業務はATM近くにある電話からの問い合わせに対応すること。お客によっては、お金の出し入れができず、怒りをぶつけてくる。繰り返し聞く強烈な言葉に、退職さえ考え始めた。上司に胸の内を告げると、同僚がお客に対応している録音を聞いてみようと提案された。同時にお客が “ ありがとう ” といった回数、自分が “ この客は嫌だ ” と思った回数を数えるよう指示された。
約70件の録音のうち、やだと思ったのは5件。「ありがとう」は40回も耳に入ってきた。日頃は、 “ この仕事は怒られるもの ” と思い込み、お客の感謝の言葉を聞き流していたのでだ。(『対話の達人Ⅱ』出版文化社)
縁に触れて喜怒哀楽が移ろいでいくのが生命。大切なのは、生命の基底部をどこに置くか。崩れざる幸福境涯を目指して、自分を鍛えようと決めた人は、試練の中にも、成長の喜びを見出せる。この強い心をつくり、鍛えるために、仕事がある。
5、高い理想を掲げる人生にとって、ねたまれ、悪く言われるのは、むしろ自分が前進している証明・・・そう決めて困難を乗り越えていく勇気の心。
「憎らしいほど強い」というのは、力士にとって、むしろ褒め言葉だろう。横綱在位63場所、在位中の670勝は、現役横綱白鵬と共に歴代1位。昨年亡くなった昭和の大横綱・北の湖だ。
あまりの強さに「負けろ!」のヤジがよく飛んだ。氏はそれが 「うれしかった」という。「勝負の世界は勝って憎まれるのが花だと思う。負けろ!と声がかかることは、周囲の注目を浴び、自分が強い証拠なのだ」(『もう1歩、前へ出れば勝てる』ごま書房)
「常に勝つことが責任つけられているのが横綱」と自らに言い聞かせ、 “ 稽古の鬼 ” となって綱を張り続けた氏には、周囲の雑音を耳を貸す暇などなかった。ケガで成績が落ち、「がんばれよ!」と声をかけられるようになった晩年、逆に「自分が情けなくなって仕方がなかった」
6、仕事の喜びを知る秘訣は、たった一つの言葉で言い表すことができる。
それは、
「良い仕事をするためには、それを “ 楽しんで ” やることだと知ることである」
・・・・・作家/パール・バック
そもそも仕事というのは、人間が生きるために求められる役割分担であろう。その役割分担は義務であったが、仕事の成果がよく出ることで人が喜んでくれるのを見ると、とても嬉しく思えるようになった。そうしているうちに、人は仕事を知れば知るほど、できればでくるほどにすきになり、ますます励んでいこうとする。
こうなると、次には、仕事こそが生きがいであり、人生の楽しみであるという境地にいく人間も多く出てくる。
楽しみながら仕事をすることで最高の成果を生み、それが人生の最高の価値となるという善の環境が出来上がる。
ノーベル賞を受賞した江崎玲於奈博士は、「学問を知っている人は、学問を愛する人に及ばない。学問を愛する人は、学問を楽しむ人に及ばない」と述べている。
これは、次の論語の孔子の言葉をもじったものだろう。
「子曰く、これを知る者は、これを好む者におよばない。これを好む者は、これを楽しむ者に及ばない」学問だけでなく、すべての仕事において楽しむことが一番である。
7、忙しくしているからといって、本当に仕事をしているとはいえない。すべての仕事の目的が実施され、あるいは達成されるには、忙しく汗をかくのと同じくらいに、将来を見通し、システム、プランニング、情報、正しい目的が必要なのだ。ただ仕事をしているように見えるだけでは、何もしていないのと変わりないのである。
・・・・・発明家/トーマス・エジソン
エジソンの有名な言葉「天才とは 1 %の才能と99%の汗で作られる」から、ただ汗をかけばよいと誤解する人も多い。
ここでのエジソンの言葉をかみしめたいものである。汗をかいて忙しくしている人でも仕事ができない人は多い。仕事のできない人にも2種類いる。
一つのタイプは、見た目にもやる気がなく、サボることばっかり考えている人間である。これはもう論外の “ できない人” である。
もう一つのタイプは、ここでエジソンが注意しているように、見た目には忙しく働いているが、実は、その仕事の中身をよく問うと、ほとんど意味のないことをしている人である。
こういう人はけっこう多いのだが、こうした仕事に自己満足してしまっている厄介な面がある。仕事は何のためにするのか。それは、会社、組織の目指す目的、目標を達成していくことである。その成果を出さなければ、仕事をする意味がない。人の成長にも、こうした成果を出す仕事を遂行することで初めて可能となるのだ。
8、知恵もアイデアも宝も、毎日の仕事に隠されている
自分の立っているところを深く掘れ。そこからきっと泉が湧き出る。
・・・・・思想家/高山樗牛(ちょぎゅう)
エジソンは言う。
「私たちが大きなチャンスを見逃しているのは、ほとんどそれが日々の仕事に隠されているからだ」と。今、自分が就いている仕事は、不本意なのかもしれない。
自分の夢や目標は大きく、もっと別の仕事や環境でないと実現できるものではない、と思っているかもしれない。
しかし、実はチャンスや次のステップというのは、今やっている仕事に真剣に打ち込んでいることから見つかるというのがほとんどであることを知るべきだ。
三洋電機を創業した井植歳男は、資金もない体も弱い、人もいないという義兄、松下幸之助の下で、商品の製造や販売に打ち込み、会社(現パナソニック)を支えた。そしてのちにその分野で創業できた。
稲盛和夫氏は、すべての就職先を断られ、最後に拾ってくれたセラミック会社で、毎日セラミックと格闘し、これがのちの京セラの事業の核となっていった。
「三六五日、日々、仕事を工夫せよ」と稲盛氏は言う。
9、チームメイトがあなたのために何をしてくれるかではなくて、あなたがチームメイトのために何ができるかである。
・・・・・プロバスケットボール選手/マジック・ジョンソン
チーム、組織が強くなるためには、そして成果を出していくためには、個々のメンバーが今チームのために、自分は、何をするべきか考えて動かなければならない。
これはスポーツにおけるチームプレーを見るとよくわかる。いわゆるエースと呼ばれる中心選手は、エースだから自分の好きなようにプレーしてよいわけではない。スタンドプレーに走り、自分が目立つために動く者が仮にエースと呼ばれているなら、そのチームは弱い。
メンバーが願い、自分も、ここは自分で決めるのがベストだと判断した時に、決められるのがエースというものだ。
ここでは、スポーツを例にとったが、このチーム・組織とメンバーの関係は、どの分野にも当てはまることだろう。
アメリカの元大統領ケネディは、国家と国民の関係にも、これを求めた。独立自尊した国民が多くいる国が強い国となるからだ。
10、全身全霊、心を込めて仕事をしなさい。そうすればあなたは必ず成功する。なぜならば、そういう人はほとんどいないからである。
・・・・・教育者/エルバート・ハバード
心を込めて、それも全身全霊で動く人、働く人には、誰も敵はなくなる。たとえば、男性が女性を口説く時、成功するかはほとんど男性の心からの誠意があるかどうかにかかっている。どこまで彼女のことを思っているか。これからの人生、彼女をどれだけ大切にし、自分と共に人生の喜びを分かち合うかどうかを考えているか、ではないか。
見た目の良さや学歴、財産も強力なライバル的要素だが、それは、必ず乗り越えていけるものだ。それよりも心がどれだけ真剣かが大事なのだ。それで心が動かない相手がいれば、選んだ相手に見る目がないだけだ。
仕事も全く同じである。口先だけではなく、心を込めて仕事ができる人は本当に少ないのだ。だから、全身全霊、心を込めて仕事をする人は必ずその人生で、大きな成果を出すようになる。これは、絶対に保証できることだ、とエルバート・ハバードは力説するのである。
11、人生は実行であり現実である。
百の各論より、一の凡策である。
順境にして悲観し、逆境にして楽観する。
・・・・・出光興産創業者/出光佐三
人生は実行であり続けることを、出光佐三の人生は見事に示した。
2013年の本屋大賞を受賞した百田尚樹氏の『海賊とよばれた男』(講談社)はその出光佐三の伝記である。
出光佐三の周りには出光を信奉する多くのものたちが、ありとあらゆる情報を持ってくる。それをもって、見事に、敵(対抗し邪魔しようとする日本の官僚、石油メジャー)の妨害を見抜いてすぐ手を打つのだ。その先はどこを見つめていたのか。
アンドレ・マルローの質問にこう答えている。
「ヨーロッパは物を中心とした世界ですが、日本人は人を中心とした世界です」
「私は、人間も信頼するという考え方を広めていくことこそ、日本の世界的使命と言ってます」
12、何をやるのかを決めるのは簡単。
何をやらないのかを決めるのが大事。
・・・・・デル創業者/マイケル・デル
やるべきことを決めたとしよう。あとは、やるべきことをひたすら前え進めばよさそうなものだが、そう簡単にはいかない。
人には次から次へと新しい用事ができていく。昔から、そしてこれからも、今これをやるべきだという提案が出されてくる。
昔からよさそうだと思ってやり続けていることも多い。
あれやこれで、結局、本当にやるべきことに費やす時間というのは少ないのだ。
だからデルは、何をやらないかを決めるのが大事だというのだ。そのためにも、自分の目標をしっかりと立て日々確認していく中で、これから本当に必要なことだったのか、これから必要なのかを厳しく精査していかなければならない。
強い意志と強い目標達成への願望があって、できることかもしれない。
13、今月の言葉
ガッツ石松さんが 語る"最強の運"を手にする要諦
・・・・・ガッツ石松さん (元WBC世界ライト級チャンピオン)
毎日、何もないアパートに帰っては、枕を抱えて泣いていたけど、きょうよりは明日は良くなる、明日後日はもっと良くなると自分に言い聞かせていた。
それが一芸に秀でるってことじゃないの? 一つのことをやり通した結果がチャンピオンなんだよ。あと一皮、あと一皮剥ければ、というところでみんな挫けていく。それがプロの世界だ。それでも頑張って這い上がってくるやつだけが最後に君臨するんだよ。
頑張って、頑張って頑張っていると自然と運が寄ってくる。それは一度逃げるんだけど、それでも頑張り続けると、また戻ってくる。行ったり来たりするんだよ、運というやつは。
それでも頑張り続ける底力のあるやつだけが、最後に最強の運を手にすることができる。
一度きり
生も一度きり、死も一度きり、一度きりの人生だから、一年草のように、独自の花を咲かせよう
・・・・『坂村真民一日一言』
人の道
人の道を守らない人間、親を大事にしない人間、恩ある人に砂をかける人間に、運はついてこない
・・・・・樋口武男(大和ハウス工業会長)
【一途一心】
一途一心とはひたすら、ひたむきということである。一つの事に命を懸けること、ともいえる。あらゆる道、あらゆる事業を完成させる上で、欠かすことのできない心的態度である。物事の成就はこのコア(核)なくしてはあり得ない。
イエローハット創業者の鍵山秀三郎氏は、ある時若い人たちから成功の秘訣を問われ、「成功のコツは二つある」と答えて白板に、「コツコツ」――と板書されたという。
コツコツは一途一心と同義である。その根底にあるのは無心である。心に雑念、妄念が入っては、人間、コツコツにはなれない。人生の先達も一致して一途一心の大事さを説いている。倫理研究所の創始者、丸山敏雄氏の言葉。
「己の一切を学問に捧げ、事業に傾け、仕事に没頭してこそ、はじめて異常(ふしぎ)の働きができる。己の大きな向上、躍進、完成は己を空しくすることである。身を捧げることである。ここに必ず真の幸福が添うのである」
誠実
何事にも前を向いて誠実に粘り強く取り組んでいけば、必ず解決策は見えてくる
・・・・・定保英弥(帝国ホテル社長兼帝国ホテル東京総支配人
仕事の本質
仕事は自己の能力を伸ばし、自分を成長させると同時に、他人にも繁栄と貢献をもたらすもの
・・・・・田辺昇一(タナベ経営創業者)
仕事の本質
仕事の本質は人の役に立つこと、もしくは人の役に立つものをつくること
・・・・・末石藏八(キシヤ会長)
いい仕事
苦労して苦労して積み上がっていった人間のほうがいい仕事をする
・・・・・亀井正文(筆工房亀井代表)
仕事の心得
仕事を持つとは責任を持つこと。やり遂げなくてはいけないという覚悟を持って、粘り続けないと初級者にもなれない
・・・・・木村 孝(染織研究家・随筆家)
それが仕事というもの
私は人のやらないことをやろうと考えています。やれそうもないことを成し遂げるのが仕事というものとちがいますやろか
・・・・・安藤百福(日清食品創業者)
よく働きよく生きる
よく働いた者がよく眠るのと同じで、よく生きた者がよく死ぬことができる
・・・・・中川一政(画家)
仕事の間隙を埋める
私の仕事ではない。
あなたの仕事でもない。
誰の仕事でもない仕事が
放置されている組織は、
そこから腐敗する
・・・・・内田 樹(神戸女学院大学名誉教授)
すぐにやる
気づいたらすぐやる人が成功する
・・・・・丸淳一(アスカ社長
仕事とは
仕事をするということは時間を使うことであり、それは命を使うということ
・・・・・佐藤芳直(S・Yワークス代表/3000社を超える企業の経営に携わってきた一流コンサルタント)
仕事
仕事ほど楽しいものはないし、仕事ほど人を成長させるものはない
・・・・・平林武昭(日本システム技術社長)
仕事の面白さ
仕事の面白さは現状を打破するところにある
・・・・・瀬戸山隆三(千葉ロッテマリーンズ顧問)
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